社会性報告

職場での取り組み

クラレグループは様々な国籍・背景を持つ人材でなりたち、長期的・持続的な企業価値の向上のためには、それら多様な人材の活躍が重要です。
そのため、本ポリシーはクラレグループ各社が守るべき基本方針を示し、グループで働くすべての人が、携わる業務や場所にかかわらず、各自の仕事の遂行を通じて会社の成長に貢献し、且つ自らの成長と幸せを追求できるような人事施策、制度、職場環境の実現を目指します。

クラレグループグローバル人事ポリシー

  • 1) 個人の人権を尊重します
    当社の理念「個人の尊重」に基づき、すべての働く人の人格・人権を尊重し、セクシャルハラスメント、パワーハラスメント、児童労働、強制労働といった人権侵害を排除いたします。また人権侵害を及ぼす事象に対し直接的・間接的に加担したり、また黙認するような行為の防止に努めます。
  • 2) 差別を排し、多様性を尊重します
    雇用、処遇、能力開発、配置、評価などあらゆる人事局面において、人種・国籍・年齢・性別・性自認・性的指向・思想等、個人の属性によるあらゆる差別を行なわず、様々な国の人材、文化、考え方を受け入れる多様性を尊重します。
  • 3) 法律を遵守し、公平・公正・透明な人事制度・人事施策を目指します
    各国の法律を遵守し、当社の理念である「個人の尊重」に基づき、公平性・公正性・透明性に最大限配慮した人事制度や人事施策の実行を目指します。
  • 4) 会社で働く人との対話を通じて良好な関係を作ります
    働く人同士の連帯と自由な意見表明を尊重し、直接・間接的な対話を通じて良好な関係を作り、風通しのよい職場風土・環境を築きます。
  • 5) 職場環境の整備に努めます
    労働安全、労働衛生の観点から、心身ともに健康で安全に働くことのできる職場環境の整備に努めます。
  • 6) クラレグループの発展に貢献できる人材の雇用に努めます
    高いモラルと倫理観を持ち、クラレグループの発展に貢献する、能力、知識、意欲のある人材を雇用します。
  • 7) 適材適所の配置を行います
    保有能力・知識、適性、能力開発の観点から、人材を適材適所に配置し、会社への貢献と個人の働き甲斐の最大化を目指します。
  • 8) 納得性のある評価・処遇を行います
    評価者との対話を通じ、職務、貢献・成果、態度・行動を重視した、納得性ある評価・処遇を行います。
  • 9) 能力開発を支援します
    職務を通じた能力開発を重視し、そのための適切な支援を行います。
  • 10)適切な情報開示とともにプライバシーの保護に努めます
    クラレグループで働くすべての人が、一体感を持って職務を遂行できるように、適切な情報提供を行うとともに、個人情報の取り扱いに関しては関連法規を遵守し、情報の紛失や漏洩の防止に努めます。

社会性目標と2019年度実績

テーマ 目標 経過・実績 評価・課題 2020年度計画
働きがいを実感できる人事施策の実施 社員に対する成長機会の提供
  • 年代別に「キャリアを自分でデザインする研修」を実施
    50歳管理職 46名
    42歳管理職 22名
    30歳ECコース 48名
    116名
  • 全社掲示板で、毎月、キャリア開発に役立つ情報を発信
  • 対象層の拡大及び、キャリアアドバイザー拡充などの実施体制強化
  • 「自律的なキャリア開発をサポートする仕組み」の継続
  • GTT18期を実施
    参加者の半数は海外各社の社員
  • トレーニー派遣、「日本→海外」8名に加え、「海外→日本」3名の受け入れの実施
  • 海外からのトレーニー受け入れを増やすことが課題
  • グローバル研修の実施を継続し、次期中期計画におけるプログラム全体の見直しを検討
  • グローバル人事システムの整備では、目標管理・人事評価の基盤システムを導入し、期初の目標設定よりグローバル共通制度にて運用を開始
  • 使いやすさの改善
  • グローバル人材情報を管理するための基盤整備
  • リーダーシップ開発のグローバル共通の仕組み構築
ダイバーシティ、ワーク・ ライフ・バランスの推進 働き方改革の取り組み
  • フレックスタイムの制度化
  • 勤務間インターバルのガイドライン制定
  • 時間外削減分を社員へ還元(生産性の向上によって時間外労働が減った場合、相当分を賞与で還元)
  • 計画通り実施
    引き続き様々な施策を実行していく
  • 時間単位年休の導入
  • 各制度の適用対象者拡充の検討
女性活躍推進
  • 女性部下をもつ管理職向け研修を実施
  • 女性に対する無意識の偏見に気づき、女性のキャリア構築を支援していくことが課題
  • 女性社員へのキャリア研修(ワークショップ)実施
障害者の雇用推進
  • クラレの障害者雇用率2.34%
  • 2021年4月から、法定雇用率が2.3%に引き上げられるため、雇用率が低い事業所・関係会社での取り組みが不可欠
  • 2.3%以上の達成
  • 主要関係会社の障害者雇用率の増加
  • 職域の拡大
心身の健康管理施策の強化・推進 メンタル・ハラスメント対策の継続・強化
  • 研修(ラインケア・セルフケア研修)を継続実施(ラインケア研修受講率100%を達成)
  • ストレスチェックをクラレ国内グループで実施
  • 計画通りに実施を達成
    継続的な実施が課題
  • 研修の継続実施
  • ストレスチェックの継続実施と分析結果のデータ活用
ハラスメント対策の推進
  • 2018年に窓口担当者研修を実施
  • 2019年より管理・監督者を対象とした研修を開始
    2020年以降も継続中である
  • ハラスメントに対する知識向上と意識付けに効果有り
    企業風土として着実に根付かせるため、教育研修の継続実施が必要
  • 管理監督者を対象とした研修の継続実施
  • 2020年下期より、一般社員を対象とした研修も並行して実施予定

社員数

社員数 2019年12月末現在
  全体 男性 女性
クラレグループ全体 11,115名 9,092名 2,023名
クラレ単体 4,181名 3,695名 486名

クラレ離職率(クラレ単体)

クラレ離職率(クラレ単体) 2019年度

  退職者数 離職率
自己都合 64名 1.53%
定年 24名 0.57%

人材育成

国内クラレグループでは、業務上必要な知識・スキルの獲得と社員の自律的なキャリア形成をサポートする人材育成制度を設けています。

育成プログラムは、正社員だけではなく、パート社員、契約社員も受講可能です。クラレ各事業所、国内グループ各社でも、独自の人材育成プログラムを企画・実施して、社員のスキル開発・キャリア形成にきめ細かく対応しています。また、自己啓発による一定の公的資格の取得に対して、奨励金を支給する資格取得支援制度も設けています。

2020年度からは、ビジネス創出力を強化するための仕組として「クラレプライド アカデミー」、社員の自律的な能力向上を促進・サポートする仕組として「ALPACA」(アルパカ、Autonomous Learning Program for Achieving Career Development)を開始しました。

グローバル人材育成プログラム

クラレグループの近年の海外売上高比率は70%近く、グループ全体の約4割の社員が日本国外で働いています。

クラレグループでは、グローバルな成長のために、世界を舞台に活躍できる人材を育成することを目的として、2007年度より「グローバル人材育成プログラム」を開始しており、2020年度までの13年間で国内外から800名以上が受講、毎年プログラムの見直しを行いながら継続実施しています。

なかでも、課長層を対象にグローバルリーダーシップ開発を目的としたGTT(Global Team Training) はこれまでに18回開催・受講者が約350名に達し、研修卒業生間のネットワークは、グループ内での国境を超えたコミュニケーションの促進に大きく貢献しています。

また、日本本社と海外子会社間で若手社員を3ヶ月限定で派遣するトレーニー制度も、利用者が100名を超え、利用者の多くは後日海外駐在するなど、グローバル人材として活躍しています。

能力開発時間

従業員が、1年間で能力開発にかける時間は、下表の通りとなっています(クラレ単体)。

2017 2018 2019
①従業員の能力開発総時間 269,012 283,142 299,920
・階層別 研修28,84330,66141,279
・選抜型 研修5,4425,7057,237
・グローバル人材育成 研修7,6569,75411,678
・ビジネススキル 研修59,26165,70560,443
・カフェテリア型 研修24,06820,40824,320
・キャリアサポート 研修4,5574,9046,364
・部署別教育 他139,185146,006148,599
②一人当たりの平均時間数 57.2 58.2 60.0
③従業員一人当たりの平均日数 7.4 7.5 7.7

グローバル人材マネジメント

人材マネジメントにおいても、人材活用のグローバル全体最適を目指し、グローバルベースでの人材マネジメント基盤の整備に取り組んでいます。2017年度よりグローバル共通の人事評価制度と人材情報システムを段階的に導入しています。これにより基本的な人材マネジメントである ①業務目標設定とこれに基づいた人事評価、②能力開発、キャリア開発の支援、③優秀人材の発掘、ローテーションや最適配置、後継者計画の検討をグローバルベースで行うことを目指しています。

併せてクラレグループグローバルで共通の行動指標「クラレコンピテンシー5x5」を導入し、人材評価項目や能力開発の指標として活用しています。また、各国各社毎に異なる資格等級を、職務サイズをベースとした基準によりグローバル・グレードとして整理し、人材配置や人材育成プログラムの受講者選定に活用しています。

自律的なキャリア開発をサポートするしくみ

クラレでは社員が自分のキャリア構築に積極的に取り組み、一人ひとりが生き生きと働く組織を目指して、『自律的なキャリア開発をサポートするしくみ』を導入しています。その一環として3つの年代層(30、40、50代)に『自分でキャリアをデザインする研修』を実施しています。

2015年の制度開始から、合計約800名が研修を受講しました。
研修後には社内キャリアアドバイザーとの面談を行って、キャリア目標実現に向けたサポートを受けています。

公正・公平な制度

・人事諸制度

クラレは、年功や属人的要素ではなく、職務遂行能力の向上や業績・役割、高い目標へのチャレンジを処遇に反映する人事制度を導入しています。具体的には、管理職は役割・業績に応じて処遇する役割等級制度により、一般社員は能力伸長度・業績に応じて処遇する職能資格制度により、給与・賞与を決定しています。また、希望するキャリアパスに応じて育成コースを転換できる制度も取り入れています。

今後も、処遇制度の納得性をより一層高めるよう、賃金・手当・賞与・勤務制度の各分野について見直しを継続していきます。

・評価について

人事評価は上司と部下が面談のうえで、職務や能力開発上の目標を設定し、実績を評価する目標管理制度を取り入れており、評価者研修も継続的に実施しています。

ダイバーシティ(多様性)とワーク・ライフ・バランスの推進

多様な人材がそれぞれの能力を最大限活かし、自分と会社の成長につなげていくためには仕事と生活の両立が必要です。クラレでは様々な制度や改革を通じて働きやすさの向上やライフイベントに応じた支援を実施しています。

・女性活躍推進

女性社員の採用人数増と職域の拡大、職場への定着の3点を重点的な課題として取り組んでいます。2019年度は、女性のキャリア支援を目的とし女性部下をもつ管理職を対象の研修を実施しました。2020年度は、他社合同の女性管理職研修や東京・大阪の女性社員を対象としたキャリア研修を実施しました。

・障がい者雇用

法定雇用率(2021年3月より2.3%)を達成するだけでなく、地域や障がい者の支援機関などとも連携して、障がい者の自立支援に取り組みます。地域の福祉施設と連携して知的障がい者のための作業所を開設しており、作業所指導員向けの講習会を実施する等、知識の向上や知見の共有にも努めています。

・育児介護休職制度

社員の育児・介護をサポートする制度を導入しています。育児休職は、保育園入園時期を考慮し、子どもが1歳を超えても休職が必要と認められる場合は、子が2歳に達する日まで取得できます。また、男性の育児参加を促進するため、男性の育児休職取得を推進しています。

また、「仕事と介護の両立セミナー」を実施し、介護の基礎知識の取得や、両立のためのノウハウを学ぶ機会を提供しています。

育児休職・介護休職者数数【クラレ】
育児休職・介護休職者数[クラレ]
年度 育児 (うち男性) 介護
2015年度 48名 18名 2名
2016年度 43名 27名 0名
2017年度 52名 33名 0名
2018年度 52名 36名 0名
2019年度 60名 39名 0名

・配偶者海外転勤同行休職制度

配偶者の海外勤務等に同行する社員に対し、休職制度を適用し、配偶者の海外勤務等が終了した後に、クラレグループへの復職を可能とする制度を制定し運用しています。

・カムバック採用制度

家庭事情等により退職し、改めてクラレでの就業を希望される方に対し、「介護休職満了者再雇用制度」「家庭事情による退職者の再雇用制度」に加え、2019年より新たに「クラレ・アルムナイ・ネットワーク」等を通じた「カムバック採用制度」の運用を開始しました。クラレで培ったキャリアにクラレ外での経験を加えて再度クラレで活躍していただけるよう、広く門戸を広げています。

・LGBTへの取り組み

2020年は管理職向けの「ハラスメント」研修の中で、セクハラ、パワハラに加え、性的指向による差別や嫌がらせの禁止について盛り込みました。(2021年以降全社員が受講予定)また社内ニュースレター通じてLGBTについての情報を発信し、職場における理解を促しています。

働き方改革の取り組み

クラレでは従業員一人ひとりが、仕事と生活の両立をしながら健康でいきいきと働き、成果を発揮できるような職場環境構築のため、働き方改革を推進しています。

・柔軟な働き方

生産性の向上とワーク・ライフ・バランスの実現を目指し、2018年度に在宅勤務制度、2019年度にフレックスタイム制度、2020年度に時間単位年休制度を導入しました。2021年度は、制度利用対象者の拡充や、利便性を向上させるための制度改定を予定しています。

・長時間労働削減への取り組み

従業員の生産性向上に対する積極的な取り組みを後押しすることを目的に、削減された時間外労働時間の手当相当額を、賞与にて従業員に還元する取り組みを2019年度から実施しています。
また、自身の仕事の進め方を見直すことで生産性の向上を目指す「生産性向上のための高密度仕事術」研修や各人が特定の1週間の定時退勤を目指す「ノー残業ウィーク」などを実施しています。ノー残業ウィークは、ノー残業「デー」では前後に残業が増える場合もあるとの問題認識から、仕事の段取りの向上、定時帰社の習慣化を目的に取り組みを開始しました。

・適正な労働時間管理

勤務管理システムの基盤整備を進め、日々の労働時間を正確に申請するとともに、管理職を含むパソコンを持つ全社員のパソコン稼働時間との乖離を把握し、適正な労働時間管理に活用しています。これによって、一定時間以上の時間外勤務が発生した部署は、対象者への産業医面談等の健康面からの対応の他、「労働時間改善計画書」にて長時間労働の改善策を作成し時間外労働の削減を図ることとしています。
また、前日の終業から翌日の始業まで一定の時間以上空ける勤務間インターバルガイドラインを制定(インターバルは10時間以上)し、運用しています。

・有給休暇の取得向上

年次有給休暇は取得率80%以上を目標に取得率向上を進めてきた結果、2019年度の取得率は87.8%でした。2021年度以降も、継続して取得率の維持・向上を図ります。

・海外拠点の取り組み

海外拠点でも、各国の法律に基づき、勤務時間管理やプライベート時間の確保を大切にする取り組みが行われています。2020年は、コロナ禍による在宅勤務の増加により長時間労働が発生する懸念があったことから、各拠点の社長や人事部門から「長時間労働を防止し、プライベート時間や休日を確保する」ことを推進するメッセージを発信するなどの対応を行いました。

心身の健康管理への取り組み

・労働衛生基本方針について

クラレでは、クラレグループ人事ポリシーに基づき、労働衛生活動方針を定め、労働衛生活動を推進しています。毎年開催される「中央安全衛生協議会」では、労働衛生活動を担当する管理部門担当取締役が出席し、労使双方の出席者と労働衛生活動の現状と課題が協議され、それが翌年の活動に反映されていきます。

<労働衛生活動方針>

  • 会社は、社員の健康の維持・増進に向けて社内の仕組み・制度を整備し、社員一人ひとりが健康に対する意識を高め、活動することを支援します。
  • 会社は、社員が安心・信頼して働ける快適な職場環境を提供し、社員の健康確保を図るとともに、社員の健康状態に常に配慮します。
  • 会社は、健康情報等の個人情報の適正な利用・管理を徹底し、また法令を遵守して健康管理を推進します。

労働安全衛生マネジメントシステムの国際規格の認証取得について、Kuraray Europe GmbHのTroisdorf site及びChemviron Italia S.r.l.のLegnago と Rhoサイトでは、ISO45001の認証を取得しています。

・メンタルヘルスケアへの取り組み

4つのケア(セルフケア・ラインケアなど)の取り組みを通じて、メンタル不調の低減に努めます。ストレスチェックをはじめ、予防のための研修実施や、カウンセリングなどの相談の仕組み、休職者の職場復帰のためのリハビリ出勤制度などを整備・推進しています。

・ハラスメントへの取り組み

パワーハラスメント、セクシャルハラスメントを中心とした各種ハラスメントへの取り組みを通じて、社員の心身の健康確保と職場環境の改善に努めています。発生防止のための研修実施や、ストレスチェック結果等の活用、相談窓口体制の強化などを推進しています。ハラスメント研修は、国内外のクラレグループ各社で実施されており、クラレでは管理・監督者の全員が受講(対象者約900名、2020年は約470名受講)しています。

・健康づくりの支援

個別の健康指導や、健康づくり運動の推進などで、社員の健康意識向上を図っています。メタボリックシンドローム対策としては、社員が自主的に生活習慣改善に取り組む「ヘルスアップ作戦」を全社的に展開し、運動目標設定を必須とするとともに、特定保健指導での個別対策なども実施しています。特定保健指導の終了者率は45.2%(2019年度)となっています。また、改善が必要な社員の早期発見のため、法律を上回る内容で健康診断を実施しています。
2020年には、コロナ禍影響による外出控え・運動不足への対策として、オンラインでの運動促進セミナーを、全国内グループ社員とその家族を対象に行いました。