環境報告

【ご注意】会計年度変更に伴い、本レポートにおける環境関連データはグラフも含め次の通りとなっています。

  • ・2013年度以前:4月-3月の12ヶ月実績
  • ・2014年度 :4月-12月の9ヶ月実績+2014年1月-3月実績(または推定値)(2013年度と重複しています)
  • ・2015年度以降:1月-12月の12ヶ月実績

地球温暖化防止

国内クラレグループは現環境中期計画においてGHG排出量削減対策量とGHG排出量原単位指数の毎年の目標を設け取り組みを継続しています。
詳細は環境中期計画の運用参照
2019年度はCO2排出削減努力(バイオマス燃料の使用量拡大、廃プラスチックの燃料化、運転効率化、省エネ機器への更新、地道な省エネ活動(ムダ取り活動)等)により、「温室効果ガス(GHG)排出削減対策量13千トン-CO2以上」の目標を上回る21千トン-CO2の排出削減対策(2011年度からの累計で195千トン-CO2削減)を実施しました。その結果、総GHG排出量は1,310千トン-CO2と2018年度より10千トン-CO2減少しましたが、換算生産量も減少したことで、GHG排出原単位指数は2018年度比で▲1.7%となり、目標の1%向上を達成できませんでした。これは、主要製品の減産、生産トラブル等に伴い設備の稼働率が低下したことが影響しています。

一方、海外クラレグループにおいては、エネルギー原単位指数(対生産量)の前年比1%向上を目標に取り組んでいます。カルゴンカーボン社、モノソル社の一部製造拠点の増産、および、トラブルで生産停止していた製造拠点の再稼働により、エネルギー消費量は606千kL(原油換算)となりました。また、エネルギー原単位指数は2018年度対比▲5.0%となり、目標を下回る結果となりました。これは一部拠点において自社製造していた中間製品を社外からの購入に切り替えたことで換算生産量が大きく減少したことが影響しています。
カルゴンカーボン社を2018年に買収した結果、クラレグループ合計のGHG排出量は買収前の2017年度2,360千トン-CO2から約870千トン-CO2増加し、2019年度は3,231千トン-CO2となりました。カルゴンカーボン社のGHGはその多くが製品である活性炭を製造するプロセスで副生するCO2です。カルゴンカーボン社では石炭原料の活性炭を製造しており、投入した石炭の一部を燃焼させることで表面に細孔を形成しています。このとき、細孔形成のために除去される石炭表面の炭素がCO2として大気中に放出されます。このように活性炭はその製造時に多くのCO2を排出しますが、活性炭は工場の排ガス中の有害化学物質を吸着除去したり、水処理(排水、飲用水原水など)に不可欠な製品であり、環境負荷の低減に大きく貢献しています。クラレグループでは活性炭のライフサイクル全体を通じた環境への影響と貢献について評価を進めています。

2016 2017 2018 2019
国内クラレグループ GHG排出量
(千トンCO2
1,303 1,330 1,320 1,310
GHG排出量原単位指数 目標 対前年度比 1%以上の向上
実績
(基準年度)
2.9% -3.5% -1.7%
削減対策量
(千トンCO2
目標 対前年度比 13千トンCO2以上の削減対策の実施
実績 11 9 13 21
海外クラレグループ エネルギー使用量
(原油換算 千KL)
437 500 595 606
エネルギー使用量原単位指数 目標 対前年度比 1%以上の向上
実績
(基準年度)
-7.4% 9.1% -5.0%

TCFD提言への対応

クラレグループは、近年、ますます重要性が高まっている環境負荷の低減につき、サステナビリティ活動における重要課題(マテリアリティ)の一つとして、“基盤強化のための価値づくり”の「資源の有効利用と環境負荷の削減」、“事業を通じた価値づくり”の「自然環境の向上」に位置づけた上で、取り組みを強化しています。今後TCFDガイドライン2.0を参考とし、TCFD提言が推奨するガバナンス、シナリオ分析に基づく戦略、リスク管理、指標と目標の開示を順次充実させていきます。

インターナルカーボンプライシング(ICP)制度

クラレグループは、ICP制度を導入することで、省エネルギー推進へのインセンティブ、 収益機会とリスクの特定や投資意思決定の指針として活用し、低炭素社会の実現を目指します。

【クラレグループのICP制度】

社内炭素価格 5,000 円/t-CO2 (※海外においては社内為替レートを用い換算)
制度対象 CO2の排出量増減を伴う設備投資
適用方法 CO2排出量の増減を社内炭素価格の適用により費用換算し、投資判断のひとつの基準として運用

再生可能エネルギーの活用

クラレでは再生可能エネルギーの中でも安定した発電量が確保できるバイオマス燃料(建築廃材等の木材チップ)発電設備を倉敷事業所に導入しています。2019年は、約45千トンのバイオマス燃料を投入したことにより、およそ67千トン-CO2の排出削減に貢献しました。今後も引き続きバイオマス燃料発電によるCO2削減貢献の取り組みを進めていきます。

※植物は自らが成長する過程で大気中のCO2を吸収しているため、植物を原料とする木材を燃焼させた際に発生するCO2の排出は差し引きゼロ(カーボンニュートラル)と考えることができます。

製品輸送時の環境負荷低減

クラレでは事業所等で自らが排出する温室効果ガス(GHG)のほかに、製品をユーザーへ輸送する際の物流段階での環境負荷の低減にも取り組んでいます。トラック輸送から貨物列車、船などへ輸送手段を転換する“モーダルシフト”の取り組みを継続して進めた結果、2019年度の製品輸送に伴う排出量は、12千トン-CO2となりました。また、クラレでは国が進める「ホワイト物流」推進運動に賛同し、2019年に自主行動宣言を提出しました。輸送効率を改善し、CO2排出量削減につながる具体的な取り組みとして、製品の保管場所(倉庫)を集約し、複数個所から出荷している製品を1か所からの出荷とすることや、輸送単位を大ロット化し、複数台のトラックで輸送していた製品をトレーラー1台に切り替えるなど、地道な取り組みを進めています。

Scope3における GHG排出量

GHGプロトコルではGHG排出量をScope1、2、3の3つに区分しています。

・Scope1(直接排出量);
自社の事業所等で燃料などを燃焼させることで発生するGHG排出量
・Scope2(間接排出量);
他社から供給された電気、熱、蒸気など購入エネルギーに伴うGHG排出量
・Scope3(その他の間接排出量);
Scope1、2以外のサプライチェーン全体(原材料から製品の廃棄まで)におけるGHG排出量

このうちScope1、2は事業者が自主的に算定し国に報告することが法で義務付けられており、クラレでも国に報告するとともにクラレレポート、クラレHP等で公表してきました。

一方、Scope1、2以外のサプライチェーン全体を考慮したGHG排出量であるScope3の算定は、クラレの直接的な事業活動による排出量だけではなく、原材料の調達から製品の流通、使用、廃棄に至るライフサイクル全体の視点から排出量を把握するもので、2013年度から算定を継続しています。

Scope3の全15カテゴリのうち、当社非該当、あるいは、算定範囲が当社製品群のごく一部のため公表対象外としたカテゴリを除き、排出量が比較的大きい5カテゴリ(下図の①~⑤)について2019年度実績を算定しました。また、クラレグループ製品のライフサイクル評価による環境貢献の定量化も継続して進めています。

※GHGプロトコル(The Greenhouse Gas Protocol):世界資源研究所(World Resource Institute;WRI)と世界環境人協議会(World Business Council for Sustainable Development;WBCSD)が中心になり、世界中の企業、NGO、政府機関等が参加して温室効果ガス/気候変動に関する国際スタンダードや関連ツールを開発するイニシアティブです。

[Scope3] サプライチェーン全体での温室効果ガス排出量管理イメージ
(図中の①から⑮はScope3のカテゴリを示す)

<Scope3 GHG排出量*1

(単位;千tCO2

2016年度 2017年度 2018年度 2019年度
上流 購入した製品・サービス*2 643 767 846 729
資本財 97 92 121 170
Scope1,2に含まれない燃料及びエネルギー関連活動 8.0 8.4 8.4 8.9
輸送、配送(上流) 11 12 12 12
事業から出る廃棄物 32 25 24 27
出張 算定していません
雇用者の通勤
リース資産(上流)*3
下流 輸送、配送(下流)
販売した製品の加工 算定した範囲が当社製品群のごく一部のため、
数値は公表していません
販売した製品の使用
販売した製品の廃棄
リース資産(下流)*4 0
*4,5,6 当社に該当しません)
フランチャイズ*5
投資*6
その他 *7 0(*7 当社に該当しません)
合計 791 905 1,011 946
  • *1 国内クラレを対象とする(カバレッジ:40%)
  • *2 国内クラレが調達した主要原料62品目の購入金額に、各原料の金額ベースの排出係数(購入者価格ベース)を乗じて算定している
  • *3 リースを受けているものはオフィス、電気製品、社用車があるが、これらはScope1,2で算定している
  • *4 他社にリースしている資産はないため、非該当
  • *5 フランチャイズ制をとっていないため非該当
  • *6 有価証券報告書にも記載の通り、投資目的での他社の株式保有は行っていない