サステナビリティ・マネジメント

リスクマネジメント

リスクマネジメント・コンプライアンス推進体制

クラレは「リスク・コンプライアンス委員会」を中心にグループとして定期的にリスクをモニタリングし、経営に影響を及ぼす重大リスクを抽出しています。この重大リスクを社長に提案、社長が重要なものを経営リスクとして特定し、取締役会を経て重点対策を実施しています。「リスク・コンプライアンス委員会」は経営リスクに対する重点対策および法令遵守・企業倫理の徹底・公正な企業活動の実践を実現すべく活動を行っています。

リスク管理方針

社長が各組織に示達するクラレグループのリスク管理方針は、グループのリスク管理全体に渡る長期的・継続的な「基本方針」と社会情勢、当社・他社動向に鑑みて当該年度に重点的に取り組む「年度課題」から成り、リスク対応の基本的な考え方を維持しつつ、リスク環境の変化に柔軟・迅速に対応できるようにしています。また「年度課題」は社長が、重点対処リスクの低減に取り組む上での具体的な課題を組織に明示し、着実な実施を指示するものです。

2020年度 クラレグループリスク管理方針
【基本方針】
  • 社会の信任を裏切る違法、不適切な行為の防止を徹底する。
  • 社員・地域・顧客・協業先等の安全と健康を脅かす事故・災害(保安事故、労働災害、環境汚染、製品事故等)の防止を徹底する。
  • 事業・社会に深刻な影響を与える事象が発生した際には、社会の信任、安全と健康を確保し、事業を継続または早期回復させるための対策に取組む。
    (社会の信任、安全と健康をまず優先し、その上で事業の継続・回復に取組む)
【年度課題】
  • 独占禁止法への違反リスクを、国内および海外の関連企業を含むグループ全体で入念に再点検し、再発防止を徹底する。
  • 保安事故の発生リスク低減のため、特に海外プラントの設備面およびソフト面を総点検し、改善・改良を図る。
  • 情報・データについて重要度に応じた分類と管理方法の明確化を図り、保全対策を強化する。
  • 品質保証システムの点検・改善を継続し、製品の信頼性を向上する。

なお、2019年の年度課題、およびその具体的な施策は以下の通りでした。

【2019年度課題】
  • 独占禁止法をはじめとする法令違反リスクの再点検し、対策を徹底する。
  • 信頼性向上を目指し、品質保証システムを総点検し改善・改良を図る。
  • 情報・データの重要性を認識し、保全対策を強化する。
【具体的な施策】
  • 国内ではモニタリング・システムを運用継続し、システムに登録された競合他社との取引・会合実施の状況を分析し、リスクの高い事業を特定しました。独禁法遵守指針の改訂増補版を作成し、社内セミナーを実施しました。海外では海外各社の体制、プログラム、活動状況を確認し、各社の事例をグローバルに共有しました。その上で実効性のあるクラレグループ独禁法遵守プログラムの確立に向け、各社のプログラムの見直し・強化を指示し定期的なフォローアップを実施しました。
  • 品質検査担当部署の実地調査を完了し、品質規格・製品仕様書・検査成績書間の整合性を確認し、是正処置をとりました。「クラレグループ製品安全規定」を策定し、グループ全体への周知を図っています。
  • グループ全体をカバーするITセキュリティポリシーを施行しました。また個人情報の取得・管理に関する基本方針である「プライバシーポリシー」改定及び「ウエブサイトにおけるアクセス情報の取り扱いについて」制定し周知しました。

リスクマネジメント

クラレグループのリスク管理は、各事業部、本部、室、事業所、関連会社が自組織のリスクを特定し、自己評価して適切に対応するタテのリスク管理と、発生するとマイナスの影響のみを与える純粋リスク(例えば、自然災害、法令違反など)を担当する本社のスタッフ部署が評価を行い組織横断的な管理を行うヨコのリスク管理を行っています。これらのリスクの中からリスクが高く全社一体となってリスク低減に取り組むべきリスクを「リスク・コンプライアンス委員会」で協議・抽出し、社長が経営リスクとして特定し、取締役会に報告すると同時に、担当役員を責任者として指名します。経営リスクは前述の重点対処リスクと継続管理リスクに分類し、それぞれ適切な対策を進めます。今年度の継続管理リスクは次のとおりです。

事故・災害に関わるリスク
  • 原料・機材の供給停止
  • ユーティリティの停止

両リスクともに、サプライヤーの事故・災害による供給停止の可能性を含め対策を実施している。

係争、法令違反に関わるリスク
  • 品質リスク
  • 知的財産権侵害
  • 贈収賄

贈収賄について世界各国での規制の厳格化や、当社グループの事業拠点の拡大に伴い防止体制の強化が必要。2015年に制定した「クラレグループグローバル贈収賄防止ポリシー」に沿って対策を進めている。

環境に関わるリスク
  • 化学物質規制
  • 有害物質の漏洩
  • 自然災害

自然災害はこれまで地震・津波への対策を主としていたが、気候変動がもたらす異常気象や激甚災害へのリスク評価および対策も強化している。

コンプライアンス

グループのコンプライアンス

クラレグループは、多様な社会との接点において遵守すべき事項を「私たちの誓約」として、またこれを企業活動の中で具体的に実践するためのガイドラインを「行動規範」として定めています。そして、法令および「私たちの誓約」を厳守することを経営トップが宣言しています。これを世界中のクラレグループ社員に周知するため、トップ宣言を明記し、「行動規範」をわかりやすく解説したコンプライアンス・ハンドブックを作成し、国内外のグループ社員全員に配布し、またe-learningを用いてグローバルに全社員に内容を徹底しました。
ウェブ参照

また、クラレ各地域拠点およびグループ各社にコンプライアンス統括者を選任するとともに、地域別にコンプライアンス委員会を設けています。2019年度は各地域別コンプライアンス委員会の活動計画および実績報告の時期をリスク・コンプライアンス委員会の開催時期に連動することにより、より効率的で実効性の高い運営体制としました。

内部通報制度

クラレグループでは、コンプライアンス違反を防止、または早期に発見・解決するための内部通報制度として、国内クラレグループ全社員(契約社員、派遣社員、パート社員を含む)を対象に「クラレグループ社員相談室」を設置しています。

これに加えて、急速なグローバル化の進展に対応するため、グローバル・コンプライアンスホットラインを設置し、全世界のすべてのグループ社員が利用可能としています。
相談・通報内容は汚職や腐敗を含む取引全般に関わるもの、社内ルール違反、人権の尊重やハラスメントなど人事関係のものなどコンプライアンス全般にわたります。
また、「クラレグループ社員相談室運用規定」および「クラレグループ グローバル コンプライアンス・ホットライン規定」で、相談・通報は匿名を可とし、相談・通報者が不利益な取り扱いを受けない通報者保護を定めています。

コンプライアンス徹底の取り組み

当社は2017年2月に浄水施設、ごみ焼却施設等で使用される活性炭の製造・販売に関して公正取引委員会の立ち入り検査を受けておりましたが、2019年11月に同委員会より東日本地区および近畿地区の浄水施設、ごみ焼却施設等の一部で使用される特定活性炭の製造・販売に関し、独占禁止法に基づく排除措置命令および課徴金納付命令を受けました。2017年3月にも防衛装備庁が発注する特定ビニロン製品の入札に関して公正取引委員会から排除措置命令を受けております。二度にわたる独占禁止法違反の排除措置命令に関し、事態の重大性を厳粛かつ真摯に受け止め、独占禁止法の遵守を経営上の最重要課題の一つとし、再発防止に向けた諸施策に全力で取り組んでおります。

再発防止に向けてこれまでに実施した具体的な取り組み

1.独占禁止法コンプライアンスプログラムの整備
(i)規則改訂・体制強化
  • トップメッセージの発信
  • 独占禁止法遵守指針の改訂
  • 競合他社との接触に関するガイドライン制定
  • 競合他社との取引・会合の事前審査制度及び入札情報の管理制度制定
(ii)社内教育
  • 外部弁護士による独占禁止法セミナーの実施
  • 事業部社員向け研修の実施
(iii)社内調査
  • 独占禁止法遵守状況に関する社内聴取
  • 関連会社を含む販売部門社員を対象にした、違反行為の社内自主申告制度の実施
  • 入札部署を対象とした法務部監査の実施

2020年度再発防止に向けた取り組み計画

1. 独占禁止法コンプライアンスプログラムのグローバルを含めた拡充・運用強化
(i)規則改訂・体制強化
  • 独占禁止法遵守指針の再改訂
  • 競合他社との接触に関するガイドラインをグローバルに拡大
  • 競合他社との取引・会合の事前審査制度及び入札情報の管理制度をグローバルに拡大
(ii)社内教育
  • 外部講師による当社役員並びにグループ会社役員向けセミナー実施
  • 社内違反事例を題材にした国内外営業社員向けセミナー実施
(iii)社内調査
  • 海外子会社も含めた独占禁止法遵守状況に関する社内聴取
  • 海外子会社も含めた入札部署を対象とした法務部監査の実施
  • 海外子会社も含めた社内自主申告制度の実施
2. 人事制度改定(国内)
  • 一定期間同一職務に従事する管理職のローテーション制度の強化

以上の取り組みにより信頼回復に向けて一層の努力をしてまいります。

コンプライアンスセミナー

2017年よりコンプライアンスセミナーと国内グループの全社員(契約社員、派遣社員、パート社員を含む)を対象に部署教育がスタートしました。2018年には職場でのディスカッション形式による部署教育を実施し、風通しの良い「日頃からなんでも言い合える職場環境」の実現を目指しました。また、2019年は前年の部署教育でクローズアップされた事業部内での本社在籍者と事業所在籍者の認識ギャップの改善をテーマに、外部講師による事業部単位でのディスカッション形式のセミナーを実施しました。そこで自分たちが抱えるコンプライアンス課題について、本社・事業所の垣根を超えて優先度付けと対策立案を実施、続く部署教育の中で各部員に内容を共有した上で、優先度の高い課題解決に向けた取り組みを行っています。
今後も同様のセミナー、部署教育を継続します。