コーポレート・ガバナンス

企業文化による強みを活かしつつグローバルガバナンスを確立

2016年3月に社外取締役に就任し、2019年度で4年目となりますが、取締役会における議論の様子は、年を経るごとに活発化していると感じています。以前は、議題ごとの一面的な質疑応答が中心でしたが、よりマルチな視点で集中した議論が交わされるようになりましたし、社外役員からは、各自のバックグラウンドの違いが表れた多様な意見が出てきています。また、社外役員への事前説明にも工夫がなされ、毎回、議題内容につき理解をした上で、取締役会に参加することが出来ています。

近年、クラレの事業はグローバル展開を急拡大させていますが、本社から海外拠点への統制にはレベルアップの余地があるように見受けられます。その国の事情に応じた現地経営の最適化を支援しつつ、ガバナンスのレベルを上げていくことが、クラレが世界に認められる真のグローバルカンパニーとなる上でのポイントと考えています。また企業ステートメントに掲げられている「世のため人のため、他人(ひと)のやれないことをやる」という精神は、クラレが培ってきた最大の強みです。企業と社会の同時発展性を示すこの精神を現地経営にも浸透させることがクラレのグローバルな発展につながるでしょう。

昨年12月には、社外役員・有識者を委員とする経営諮問委員会が設置されました。私も社外取締役としての経験を通じ、経営における社長の役割や責任の重さを理解するようになりました。同委員会では、社長の選解任プロセスや後継人材の育成などの議論をしっかり進めていきます。

ESG視点の取り組みにさらなる注力を 社外監査役の視点からサポート

クラレの事業に関する高度な知識や、情報収集力を有する常勤監査役の方々とは異なる立場として、私なりの知見や経験を踏まえ、主として3つの視点からの分析・評価・意見の表明を通し、社外監査役としての責務を果たし、当社の発展に寄与できればと考えています。

1つ目は、クラレの企業文化と大きく異なる他業種・他業態の価値観を参照した外部の視点。2つ目に、海外事業に長年携わってきた経験にもとづくグローバル展開への視点。そして3つ目に、銀行・証券業界の出身者としてクラレと資本市場の対話を捉える金融・財務面への視点です。

クラレは誠実で、愛社精神と社会への貢献意識を持つ集団であると感じられます。コーポレートガバナンスにおいても、しっかりとしたフレームワークを築いていますが、法令順守や、品質保証、重大事故・自然災害への対応、内部統制の強化、経営判断の合理性向上など、引き続き追求すべきものがあります。外部からの違った見方を入れることで、ガバナンス強化の一助になれればと思います。

こうしたガバナンス面も柱の1つとするESG視点の取り組みは、資本市場を見ても無視できない流れとなっており、クラレが資本市場と対話を進める上で、私の金融業界における経験も活かせるはずです。監査役としての役割を踏まえつつ、クラレの発展のために行動していきます。