Planet

【ご注意】会計年度変更に伴い、本レポートにおける環境関連データはグラフも含め次の通りとなっています。

  • ・2013年度以前:4月-3月の12ヶ月実績
  • ・2014年度 :4月-12月の9ヶ月実績+2014年1月-3月実績(または推定値)(2013年度と重複しています)
  • ・2015年度以降:1月-12月の12ヶ月実績

地球温暖化防止

クラレグループの取り組み

国内クラレグループでは2018年度を初年度とする3ヵ年の「環境中期計画」において、GHG排出量削減対策量(13千トン-CO2/年以上)とGHG排出量原単位指数(対前年比1%以上の向上)の年度目標を定め、活動を行いました。2020年度の結果を以下に示します。
環境目標と実績
2020年度は各生産拠点でGHG排出削減対策に継続して取り組んだことに加え、新型コロナウィルス感染症の影響による世界的な需要減のため生産活動を抑制したこともあり、GHG排出量は2019年度に比べ81千トン-CO2減少し、1,229千トン-CO2となりました。目標のGHG排出削減対策量は、各製品の収率向上、原料やユーティリティの回収利用、省エネ機器への更新、省エネ活動(ムダ取り活動)等により、目標を上回る14千トン-CO2(2016年度からの累計では68千トン-CO2削減)を達成しました。一方でもう一つの目標のGHG排出原単位指数は、2019年度比で▲14.3%と大幅に悪化しました。これは、新型コロナウイルスの影響で主要製品の減産を余儀なくされ、多くのプロセスでエネルギー効率の悪い運転になったことが影響しています。

海外クラレグループも、国内クラレグループと同様に各拠点で省エネルギーや収率向上等に取り組んだことに加え、新型コロナウィルスの影響で生産量が減少したこともあり、GHG排出量は1,816千トン-CO2と2019年度に比べ105千トン-CO2減少しました。海外の生産拠点では電力・蒸気のほとんどを外部から購入しているため、生産拠点における環境改善活動の成果を適正に評価する指標として、ユーティリティ供給元の影響(CO2排出係数の変化)を受けるGHG排出量ではなく、エネルギー使用量を用いた原単位指数で年度目標(対前年比1%以上の向上)を定めています。2020年度のエネルギー原単位指数は2019年度対比0.2%向上となり、目標には未達ながらわずかに改善しました。海外でも国内と同様に新型コロナウイルスの影響で多くの製品で減産となりエネルギー効率の悪い運転となりましたが、エネルギー原単位の比較的小さな一部の衛材向け製品の需要が堅調で増産となったため、その影響を最小限とすることが出来ました。

クラレグループのGHG排出量は2014年度以降、ビニルアセテート事業、活性炭事業(カルゴンカーボン社)の買収などM&Aによる事業編入等で増加しています。特に、カルゴンカーボン社を2018年に買収した結果、クラレグループのGHG排出量は買収前の2017年度2,360千トン-CO2から2020年度は3,045千トン-CO2と大きく増加しました。カルゴンカーボン社から排出されるGHGは、そのほとんどが製品である活性炭の製造プロセスで副生するCO2です。活性炭は原料となる石炭の一部を燃焼させ表面に細孔を形成することで製造します。このとき、細孔形成のために除去される石炭表面の炭素はCO2として大気中に放出されます。このように活性炭は製造時に多くのCO2を排出しますが、製品の活性炭は工場の排ガス中の有害化学物質の吸着除去、工場排水や飲用水原水などの浄化に不可欠な製品として広く使われており、地球環境の改善、環境負荷の低減に大きく貢献しています。クラレグループでは活性炭のライフサイクル全体を通じた環境への影響と貢献について評価を行い、環境に対する貢献が製造時の環境負荷を上回るということを確認しています。

2016 2017 2018 2019 2020
国内クラレグループ GHG排出量(Scope1+Scope2) 千トン-CO2 1,303 1,330 1,320 1,310 1,229
Scope1排出量 千トン-CO2 1,128 1,147 1,138 1,121 1,067
Scope2排出量 千トン-CO2 175 183 182 189 162
GHG排出量原単位指数 目標 対前年度比 1%以上の向上
実績 2.9% -3.5% -1.7% -14.3%
削減対策量
(千トン-CO2
目標 対前年度比 13千トンCO2以上の削減対策の実施
実績 11 9 13 21 14
海外クラレグループ GHG排出量(Scope1+Scope2) 千トン-CO2 933 1,032 1,868 1,921 1,816
Scope1排出量 千トン-CO2 76 93 862 939 978
Scope2排出量 千トン-CO2 856 939 1,006 981 838
エネルギー使用量 原油換算 千KL 437 500 595 606 553
エネルギー使用量原単位指数 目標 対前年度比 1%以上の向上
実績 -7.5% 9.1% -5.9% 0.2%

Scope3における GHG排出量

GHGプロトコルではGHG排出量をScope1、2、3の3つに区分しています。

・Scope1(直接排出量);
自社の事業所等で燃料などを燃焼させることで発生するGHG排出量
・Scope2(間接排出量);
他社から供給された電気、熱、蒸気など購入エネルギーに伴うGHG排出量
・Scope3(その他の間接排出量);
Scope1、2以外のサプライチェーン全体(原材料から製品の廃棄まで)におけるGHG排出量

このうちScope1、2は事業者が自主的に算定し国に報告することが法で義務付けられており、クラレでも国に報告するとともにクラレレポート、クラレHP等で公表してきました。

一方、Scope1、2以外のサプライチェーン全体を考慮したGHG排出量であるScope3の算定は、クラレの直接的な事業活動による排出量だけではなく、原材料の調達から製品の流通、使用、廃棄に至るライフサイクル全体の視点から排出量を把握するもので、2013年度から算定を継続しています。

Scope3の全15カテゴリのうち、当社非該当、あるいは、算定範囲が当社製品群のごく一部のため公表対象外としたカテゴリを除き、排出量が比較的大きい5カテゴリ(下図の①~⑤)について2020年度実績を算定しました。また、クラレグループ製品のライフサイクル評価による環境貢献の定量化も継続して進めています。

※GHGプロトコル(The Greenhouse Gas Protocol):世界資源研究所(World Resource Institute;WRI)と世界環境人協議会(World Business Council for Sustainable Development;WBCSD)が中心になり、世界中の企業、NGO、政府機関等が参加して温室効果ガス/気候変動に関する国際スタンダードや関連ツールを開発するイニシアティブです。

[Scope3] サプライチェーン全体での温室効果ガス排出量管理イメージ(対象:国内クラレ)
(図中の①から⑮はScope3のカテゴリを示す)

<Scope3 GHG排出量*1

(単位;千トン-CO2

2016年度 2017年度 2018年度 2019年度 2020年度
上流 購入した製品・サービス*2 610 698 767 667 443
資本財 97 92 121 170 108
Scope1,2に含まれない燃料及びエネルギー関連活動 8.0 8.4 8.4 8.9 7.8
輸送、配送(上流) 11 12 12 12 10
事業から出る廃棄物 32 25 24 27 26
出張 算定していません
雇用者の通勤
リース資産(上流)*3
下流 輸送、配送(下流)
販売した製品の加工 算定した範囲が当社製品群のごく一部のため、
数値は公表していません
販売した製品の使用
販売した製品の廃棄
リース資産(下流)*4 0
*4,5,6 当社に該当しません)
フランチャイズ*5
投資*6
その他 *7 算定していません
合計 759 836 933 884 595
  • *1 国内クラレを対象とする(カバレッジ:40%)
  • *2 国内クラレが調達した主要原料62品目の購入金額に、各原料の金額ベースの排出係数(購入者価格ベース)を乗じて算定している
  • *3 リースを受けているものはオフィス、電気製品、社用車があるが、これらはScope1,2で算定している
  • *4 他社にリースしている資産はないため、非該当
  • *5 フランチャイズ制をとっていないため非該当
  • *6 有価証券報告書にも記載の通り、投資目的での他社の株式保有は行っていない
  • *7 企業活動に間接的に関係するカテゴリ1からカテゴリ15の範囲に含まれない任意の排出カテゴリ

TCFD提言への対応

クラレグループは気候変動対策を当社の取り組むべき重要課題の一つとして捉え、2020年11月に気候関連財務情報開示タスクフォース (TCFD)※提言に賛同しました。また2022年度を起点とするサステナビリティ中期計画では、気候変動の緩和策として、温室効果ガス(GHG)の排出量削減と省エネルギーの促進、自然環境の向上に貢献する製品の拡大、サーキュラーエコノミーへの対応などを掲げました。これらの施策を着実に実行すると共に、TCFDが推奨するガバナンス、シナリオ分析に基づく戦略、リスク管理、指標と目標に基づく開示も段階的に充実していきます。

※金融安定理事会(FSB)により、気候関連の情報開示及び金融機関の対応をどのように行うかを検討するために設立された「気候関連財務情報開示タスクフォース(Task Force on Climate-related Financial Disclosures)」。

ガバナンス

クラレグループでは、社長を委員長とするサステナビリティ委員会がサステナビリティ活動を推進します。この委員会の傘下には、サステナビリティ中期計画で掲げたグローバル施策を実行するプロジェクトチームを配置し、各プロジェクトを推進します。また、気候変動に資する施策の進捗状況を確認した上で、TCFDに基づく開示を進める「TCFD推進プロジェクトチーム」も傘下に設置し、開示の充実を図ります。

サステナビリティ委員会での討議事項は取締役会に報告し、取締役会の意見をサステナビリティ活動の推進に反映します。

戦略

低炭素社会への移行において生じる事象、および気候変動により発生する物理的な事象に対するクラレグループのリスクと機会を下表の通り選定しました。

低炭素社会へ移行する場合のリスクとして、炭素税の税負担の増加やプラスチック製品使用量の減少等が挙げられます。これらのリスクを低減するため、自社のみならず取引先と共創しGHG排出量の削減に取り組むほか、サーキュラーエコノミーに資する製品・技術開発を進めます。さらに、顧客の製品や最終製品が製造・流通・消費される過程でのGHG排出量の削減やプラスチック製品の使用量削減を機会と捉え、自然環境向上に貢献する製品や技術の拡販および創出を強化します。

また、気候変動による激甚災害への対策を進め事業継続に向けた備えを行うと共に、災害対策や水や食物資源確保に貢献する製品を通じて気候変動に強靭な社会の実現を目指します。今後は気候変動シナリオを特定しリスクと機会の分析を深化し、同時にクラレグループへの影響評価を進めていきます。

表 : クラレグループの気候変動によるリスクと機会

リスク管理

クラレグループでは気候変動の緩和と適応の両側面についてリスク管理を実施しています。GHG排出量削減や自然環境向上への貢献製品の拡大等の気候変動の緩和策は、主としてサステナビリティ委員会がその進捗を管理し、脱炭素社会への移行リスクの低減を進めます。

一方、気候変動への適応策については災害対策・事業継続性の強化に向けて、各組織が毎年リスク自己評価を実施しています。その評価結果をリスク・コンプライアンス委員会(委員長 : サステナビリティ推進本部担当取締役)で討議し、対策が必要な場合は社長が経営リスクとして特定し責任者を指名し対策を進めています。

指標と目標

気候変動緩和の長期目標として、2030年に自社でのGHG排出量(Scope1と2)を2019年度比30%削減、2050年にカーボンネットゼロを掲げました。また、サステナビリティ中期計画では気候変動に関わるGHG排出量削減および自然環境貢献製品の売上高向上目標を下表の通り設定しています。

表: サステナビリティ中期計画の気候変動に関わる施策と目標

インターナルカーボンプライシング(ICP)制度

クラレグループは、ICP制度を導入することで、省エネルギー推進へのインセンティブ、 収益機会とリスクの特定や投資意思決定の指針として活用し、低炭素社会の実現を目指します。

【クラレグループのICP制度】

社内炭素価格 10,000 円/トン-CO2 (※海外においては社内為替レートを用い換算)
運用開始 2022年1月から
制度対象 CO2の排出量増減を伴う設備投資
適用方法 CO2排出量の増減を社内炭素価格の適用により費用換算し、投資判断のひとつの基準として運用

再生可能エネルギーの活用

倉敷事業所では、再生可能エネルギーの中でも安定した発電量が確保できるバイオマス燃料(建築廃材等の木材チップ)発電設備を導入しています。2020年は、43千トンのバイオマス燃料を投入したことにより、およそ64千トン-CO2の排出削減に貢献しました。今後も引き続きバイオマス燃料発電によるCO2削減貢献の取り組みを進めていきます。

※植物は自らが成長する過程で大気中のCO2を吸収しているため、植物を原料とする木材を燃焼させた際に発生するCO2の排出は差し引きゼロ(カーボンニュートラル)と考えることができます。

製品輸送時の環境負荷低減

クラレでは事業所等で排出するGHGのほかに、製品をユーザーへ輸送する際の物流段階でのGHG排出量の低減にも取り組んでおり、例えばトラック等の自動車から貨物列車、船など環境負荷の小さい輸送手段に転換する「モーダルシフト」の取り組みを継続しています。また、国が進める「ホワイト物流」推進運動に賛同し、2019年に自主行動宣言を提出しました。また、輸送効率を改善し、GHG排出量削減につながる具体的な取り組みとして、製品の保管場所(倉庫)を集約し、複数個所から出荷していた製品を1か所からの出荷とする、輸送単位を大ロット化することで、複数台のトラックで輸送していた製品をトレーラー1台に切り替えるなど、地道な取り組みを進めています。その結果、2020年度の製品輸送に伴うGHG排出量は、10千トン-CO2となりました。