Planet

地球温暖化防止/GHG排出量と削減の取り組み

GHG排出量(Scope 1、2)とクラレグループの取り組み

クラレグループの2024年の総GHG排出量(Scope 1、2)は、2023年の2,700千トン-CO2から6.2%増加し、2,868千トン-CO2となりました。(2021年比では5.0%減少)

国内クラレグループでは、2023年の1,144千トン-CO2から2024年は1,187千トン-CO2に増加しました。一部の事業において生産量が前年比で増加したことにより、燃料、ユーティリティ起源の排出量が増加しましたが、国内クラレグループの各生産拠点で、各製品の収率向上、原料・ユーティリティの回収利用、省エネ機器への更新、省エネ活動(ムダ取り活動)などのGHG排出削減に継続して取り組み、2024年は17千トン-CO2の削減対策を実施し、増加を最小限に抑えました。

海外クラレグループの2024年のGHG排出量は2023年の1,555千トン-CO2から増加し、1,681千トン-CO2となりました(2024年は117千トン-CO2相当の分離型エネルギー属性証明書の取得や再エネプラン契約のユーティリティを調達しており、このGHG排出量削減分を含みます)。海外クラレグループにおいても各生産拠点でGHG排出削減につながる省エネや収率向上に継続して取り組んでいますが、パールリバー工場(カルゴン・カーボン社)、ポーランド新工場(MonoSol社)で新ラインが稼働を開始したことや、イソプレン関連製品の新規生産拠点であるタイ工場の本格稼働で生産量・エネルギー使用量が増加し、GHG排出量は増加しました。

サステナビリティ中期計画 Planet の目標として設定した、クラレグループのエネルギー使用量の売上高原単位の2024年実績は、2019年比13.8%の低減(改善)となり、目標である「2026年度に5%以上の低減(改善)」を大きく上回りました。今後も引き続きGHG排出削減につながる省エネ活動などを通じてさらなる原単位の改善に取り組みます。

クラレグループのGHG排出量は2014年以降、ビニルアセテート事業、活性炭事業(カルゴン・カーボン社)の買収などM&Aによる事業編入などの影響で、2019年まで増加しました。特に、2018年のカルゴン・カーボン社の買収の結果、クラレグループのGHG排出量は大きく増加しました。カルゴン・カーボン社から排出されるGHGは、そのほとんどが製品である活性炭の製造プロセスで副生するCO2です。活性炭は原料となる石炭の一部を燃焼し表面に細孔を形成することで製造します。このとき、細孔形成のために除去される石炭表面の炭素はCO2として放出されます。このように活性炭は製造時に多くのCO2を排出しますが、一方で活性炭は工場の排ガス中の有害化学物質の吸着除去、工場排水や飲用水原水などの浄化に不可欠な製品として広く世の中で使われており、地球環境の改善、環境負荷の低減に大きく貢献しています。クラレグループでは、2030年までに800億円の設備投資を計画し、製造過程で副生するCO2の分離・回収、利用、貯蔵(CCUS)の技術確立に向けた検討、省エネ・燃料転換関連投資、電力の再エネ化にも引き続き取り組んでいく予定です。さらに、2035年頃にグリーン水素やグリーンアンモニアなどのCO2排出を伴わないクリーンエネルギーを調達する検討も進めており、2035年までに2021年比63%削減、2050年までにカーボンネットゼロの達成を目指します。

<GHG排出量・エネルギー使用量(クラレグループ)>

2019 2020 2021 2022 2023 2024
クラレグループ(国内+海外) GHG排出量
(Scope 1、2)
千トン-CO2 3,231 3,045 3,020 2,896 2,700 2,868
Scope 1排出量 千トン-CO2 2,060 2,045 1,973 1,877 1,748 1,917
Scope 2排出量 千トン-CO2 1,170 1,000 1,047 1,020 952 951
エネルギー使用量 原油
換算
千KL
1,089 1,002 1,075 1,065 1,059 1,119
エネルギー使用量の売上高原単位(2019年を100とした場合) 目標 2026年に2019年比5%以上の低減
実績 100 - - - - 86.6
(13.8%低減)

【ご注意】会計年度変更に伴い、本レポートにおける環境関連データはグラフも含め次のとおりとなっています。

  • ・2013年度以前:4月-3月の12ヶ月実績
  • ・2014年度 :4月-12月の9ヶ月実績+2014年1月-3月実績(または推定値)(2013年度と重複しています)
  • ・2015年度以降:1月-12月の12ヶ月実績

<GHG排出量・エネルギー使用量(国内・海外別)>

2019 2020 2021 2022 2023 2024
国内
クラレ
グループ
GHG排出量(Scope 1、2) 千トン-CO2 1,310 1,229 1,340 1,236 1,144 1,187
Scope 1排出量 千トン-CO2 1,121 1,067 1,163 1,047 970 1,021
Scope 2排出量 千トン-CO2 189 162 177 189 174 166
エネルギー使用量 原油
換算
千KL
452 422 452 430 394 416
海外
クラレ
グループ
GHG排出量(Scope 1、2) 千トン-CO2 1,921 1,816 1,680 1,660 1,555 1,681
Scope 1排出量 千トン-CO2 939 978 810 830 778 896
Scope 2排出量 千トン-CO2 981 838 870 830 777 785
エネルギー使用量 原油
換算
千KL
637 580 623 635 665 703

GHG排出量(Scope 3)

GHGプロトコルではGHG排出量をScope 1、2、3の3つに区分しています。

・Scope 1(直接排出量);
自社の事業所等で燃料などを燃焼させることで発生するGHG排出量
・Scope 2(間接排出量);
他社から供給された電気、熱、蒸気など購入エネルギーに伴うGHG排出量
・Scope 3(その他の間接排出量);
Scope 1、2以外のサプライチェーン全体(原材料の調達から製品の廃棄まで)におけるGHG排出量

このうちScope 1、2は事業者が算定し国に報告することが法で義務付けられており、クラレでも国に報告するとともに、クラレグループ全体のScope 1、2排出量をクラレレポート、クラレウェブサイト等で公表しています。

一方、Scope 1、2以外のサプライチェーン全体を考慮したGHG排出量であるScope 3は、クラレの直接的な事業活動による排出量だけではなく、原材料の調達から製品の流通、使用、廃棄に至るライフサイクル全体の視点から排出量を把握するものです。この度、Scope 3の算定範囲を国内からクラレグループ全体に拡大し、同時にカテゴリー1の算定方法を変更しました。カテゴリー1については、従来は主要原料のみの購入金額に、各原料部門に応じた金額単位の排出原単位(購入者価格ベース)を乗じて算定していましたが、対象品目を拡大し、かつ個々の品目ごとの排出原単位(重量ベース)を使用することにより算定確度を高めました。

さらにScope 3で排出量の大きいカテゴリー1について、2035年までに2021年比で37.5%削減するという目標を新たに設定しました。クラレグループの2024年Scope 3(カテゴリー1)の排出量は2023年の2,544千トン-CO2から20.4%増加し、3,062千トン-CO2となりました。(2021年比では4.1%増加)一部事業において生産量増加により原料購入量が増加したことと排出係数の変更があったことにより前年比で増加しました。今後はサプライヤーと協働し排出量削減に向けた取り組みを進めていきます。

※GHGプロトコル(The Greenhouse Gas Protocol):世界資源研究所(World Resource Institute;WRI)と世界経済人会議(World Business Council for Sustainable Development;WBCSD)が中心になり、世界中の企業、NGO、政府機関等が参加して温室効果ガス/気候変動に関する国際スタンダードや関連ツールを開発するイニシアティブです。

クラレグループのサプライチェーン全体でのGHG排出イメージ 2024年
(図中の①から⑮はScope 3のカテゴリーを示す)

<GHG排出量(Scope 3)*1

カテゴリー 単位 2021 2022 2023 2024
1.購入した製品・サービス*2 千トン-CO2 2,941 2,872 2,544 3,062
2.資本財 133 157 344 263
3.Scope 1、2に含まれない燃料およびエネルギー関連活動 546 549 534 574
4.輸送、配送(上流) 264 284 250 277
5.事業から出る廃棄物 78 78 58 68
6.出張 1 2 2 2
7.雇用者の通勤 4 4 5 5
8.リース資産(上流) 対象のオフィス、電気製品、社用車の排出量はScope 1、2に含めています。
9.輸送、配送(下流) クラレグループの製品は、多様な用途において主に中間製品として販売し、輸送、加工、およびその廃棄までの追跡と把握が困難であるため、排出量の合理的な算定が不可能であり、これらのカテゴリーを算定対象外としています。
10.販売した製品の加工
11.販売した製品の使用
12.販売した製品の廃棄
13.リース資産(下流) 他社にリースしている資産はないため、当社に該当しません。
14.フランチャイズ フランチャイズ制をとっていないため、当社に該当しません。
15.投資 有価証券報告書に記載のとおり、投資目的での他社の株式保有は行っていません
Scope 3合計 千トン-CO2 3,967 3,946 3,737 4,251
  • *1 クラレグループの連結の範囲を対象とする(カバレッジ:100%)
  • *2 クラレグループ全体の総購買額上位90%を占める取引先から購入した製品・サービスの購入量に、それぞれの品目に関する排出原単位を乗じて算定対象のGHG排出量とし、比例計算により総購入量分の排出量を算定した。
    重量単位の排出原単位には「Managed LCA Content(GaBi)(Sphera社)」、重量単位の排出原単位による算定が困難であるごく一部の購入品については金額単位の排出原単位として環境省「サプライチェーンを通じた組織の温室効果ガス排出等の算定のための排出原単位データベース」を用いた。

<Scope 3のGHG排出量削減の取り組み例(製品輸送時の環境負荷低減)>

クラレでは製品をユーザーへ輸送する際の物流段階でのGHG排出量の低減に取り組んでいます。例えば、トラックでの輸送効率を改善するため、製品の保管場所(倉庫)を集約し、複数個所から出荷していた製品を1か所からの出荷として輸送単位を大ロット化することで、複数台のトラックで輸送していた製品をトレーラー1台に切り替える取り組み、トラック等の自動車から貨物列車、船など環境負荷の小さい輸送手段に転換する「モーダルシフト」の取り組みを継続しています。また、国が進める「ホワイト物流」推進運動に賛同し、2019年に自主行動宣言を提出しました。

カーボンフットプリント

カーボンフットプリント(CFP)の活用

サプライチェーン全体を通したCO2排出量を計測するというトレンドが高まっています。こういった状況下、顧客よりクラレグループ製品のカーボンフットプリント(CFP※1)を求められる機会が増えています。そこでクラレグループでは、グローバルで統一したCFP算定体制を整備し、2024年から運用を開始しました。CFP算定方法は主要な国際標準※2および化学業界のガイドライン※3を参照しており、算定範囲については自社の工場の出口まで(Cradle-to-gate)としています。加えて、計算主体と検証主体を別部署とすることで、算定結果の客観性と信頼性を高める仕組みとしています。また、リサイクルやバイオマス原料の活用を伴う環境配慮型製品・技術の新規開発の評価手法の1つとしてもCFPを活用しています。

※1 Carbon Footprint of Productsの略。商品やサービスの原材料調達から廃棄・リサイクルに至るまでのライフサイクル全体を通して排出される温室効果ガスの排出量をCO2に換算した値。素材業界では算定範囲をCradle-to-gateとすることが一般的。

※2 ISO14040:2006、ISO14044:2006、ISO14067:2018

※3 日本化学工業協会 化学産業における製品のカーボンフットプリント算定ガイドライン(2023年2月発行)、Together for Sustainability The Product Carbon Footprint Guideline for the Chemical Industry(Version 2.1)