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製品安全・化学物質管理

製品安全

クラレグループの各事業部においては、製品の安全を確実なものとするため、日々の新製品開発や変更管理(原材料の変更、製造設備や条件の変更などを対象とした製品の安全性や性能発現への影響の評価)の際に、さまざまなリスクアセスメント手法を用いた評価やそれに基づく改善を行ない、製品の安全および品質を保証し、お客様へお届けしています。

かつ、全社的に安全性の検討を要する製品および開発品(体内摂取されるもの、医療機器に使用されるもの、ナノマテリアルを使用するものなど)に対して、「重要案件に関するPL審議委員会規則」に基づきサステナビリティ推進本部を中心に審議委員会を組織し、製品の安全性の確認を経て、開発・上市する仕組みを構築しています。2021年度も、この規則に定められた対象となる製品の開発・商品化に対して、社内有識者を集めたPL審議委員会で、販売先であるお客様・製造に携わる従業員・製品を使用する消費者の皆さまに対する安全性や環境への影響などを審議し、適切な対策を取ることを前提に開発・商品化を進めることを決定しました。

クラレグループではこのように事業部ごとのリスクアセスメントに加え安全性に関する審議を必要とする事案のPL審議委員会による審議を通じて、お客様・消費者・従業員の皆様に対し適切な安全対策がとられた製品を供給します。

化学物質管理

SAICM1)やSDGs2)をはじめとする世界的な取り組みを背景に、各国の化学品に関する法令の改正が実施される近年の環境変化に対し、ポストSAICMを見越し種々の取り組みを行っております。

●管理体制
クラレグループでは、社内規定においてサステナビリティ推進本部担当役員がグループの化学物質管理を統括することを明確にしており、サステナビリティ推進本部は、コーポレート組織として、化学物質管理の全社的な仕組みの継続的改善に取り組んでいます。また、個々の製品については、製品をよく知る各事業部門が責任を担っており、製品の用途やお客様からの要望等に応じた、安全性の確認、法規制対応、サプライチェーンにおける化学物質情報の伝達等を行っております。事業部門とサステナビリティ推進本部は、連携しながらお客様に当社の製品を安全に使用いただけるよう、努めております。

●法令遵守、情報提供
【情報提供】
国内クラレグループでは、社外に提供される化学品について(自社内移動でも物流を委託する場合を含む)、全てSDS3)を提供することを社内規定で定めております。Verisk 3E社の「Global Incident Response Hotline Service」を2017年より契約し、海外向けの製品SDSには、緊急時に24時間、マルチ言語で対応できる電話番号を記載し、当社製品の海外における事故やお問い合わせに備えております。また、化学品の中でも特定の性状、有害性を持つ製品を輸送する場合は、イエローカード4)を発行し物流業者様に提供しております。

【法改正への対応】
以下、2021年度に実施した化学品関連法への対応事例につきましてご紹介いたします。今後も継続して、国内外の化学品に関する規制に適切に対応できるよう努めてまいります。
欧州
2021年1月よりSVHC5)を0.1w%以上含む成形品は、SCIP6)データベースへ登録することが義務けられました。当社の欧州法人は、対象製品を登録しました。
英国
2020年末に英国がEUを離脱したことに伴い、UK REACHが施行されました。当社欧州法人を輸入者、又はOR(唯一の代理人)としてEU REACH へ登録している化学物質を含む製品のうち、英国へ輸出されているものに関しては、新たにUK REACH のために用意したOR等を通して、期限の2021年10月27日までに適切に所管当局へDUIN7)を提出しました。
韓国
化学物質の登録及評価等に関する法律(化評法)に基づき、製造・輸入量1000t/年超の化学物質について期限の2021年末までに登録を完了させました。また、産業安全保健法(産安法)で新しく施行されたSDS提出制度におきまして、当社韓国グループ企業を代理人としてSDSを登録できる仕組みをクラレグループ内で新たに整備し、対象SDSの登録を開始しました。
ベトナム
ナショナルケミカルインベントリ(NCI)届出に対応するために、当社ベトナムグループ企業を通して、ベトナムで流通している当社製品に含まれる化学物質に関する情報提供を行いました。

【グローバル連携】
海外における法規制対応や、海外拠点で生産した製品の登録など、日本国外での対応が必要となる場面も増えています。当社では海外グループ企業に在籍するプロダクト・スチュワードシップマネージャーや法規制担当者と連携し、各国の化学品関連法規制の改正状況や運用状況に関する情報収集を行い、適宜情報共有、検討を行うことで、グループ全体で効率的に確実な対応ができる体制を目指しております。

●教育
サステナビリティ推進本部と事業部(化学物質管理責任者、担当者等)の情報共有の場として、「化学物質管理連絡会」を設けており、2021年度は国内において4回開催しました。ここでは、参加者の化審法・安衛法等の国内化学品規制の知識を深めるとともに、海外化学品規制の改正情報やそれに対する当社の具体的な対応方法等の周知・教育等を行っています。2021年度は海外拠点に向けても、同様の会議を2回開催しました。
また、化学物質管理の重要な要素であるリスク評価や法規制の最新動向を学ぶ機会として、2021年度から日本化学工業協会主催の「ケミカルリスクフォーラム」のWeb配信を活用しております。Webで受講できることもあり、事業部の化学物質管理責任者だけでなく、事業所の担当者等、社内の幅広いメンバーが多数聴講しています。

●化学物質管理システム
国内クラレグループでは、ITツールによる化学物質管理を行っています。社内データベースに登録した原材料や製品等の含有化学物質情報と、法令・化学物質の安全性情報等の外部データベースを連携させることにより、関連する法規情報や危険有害性情報の取得、SDS等の作成ができる仕組みを整備し、お客様への情報提供を行っています。

  • 1)SAICM:国際的な化学物質管理のための戦略的アプローチ(Strategic Approach to International Chemicals Management)
  • 2)SDGs:持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals)
  • 3)SDS:安全データシート(Safety Data Sheet)。化学物質の性質や危険性に関する情報を記載した文書
  • 4)イエローカード:化学物質や高圧ガス輸送時の万一の事故に備え、ローリーの運転手や消防・警察などの関係者が取るべき処置を書いた緊急連絡カード
  • 5)SVHC:高懸念化学物質。化学物質の登録、評価、認可及び制限に関わる規則(REACH規則)における付属書14「認可対象物質」の候補物質
  • 6)SCIP:Substances of Concern In articles as such or in complex objects (Products)の頭文字。欧州「廃棄物枠組指令」に基づいて制定されたデータベース
  • 7)DUIN:Downstream User Import Notification 川下事業者輸入届出

製品安全・化学物質管理の目標と実績

2021年度
目標 実績 評価
事業部間の情報共有向上により、「製品に起因する重大事故の未然防止と重大事故・違反件数ゼロ」の確度を高める。 製品安全や化学物質管理に関し、コーポレートと事業部の定期的な連絡会にて、社内ルールや法規制の教育を行い、社員の意識向上を図っています。また、顧客からの苦情情報を集約し、上述の連絡会で情報共有することで横展開も行っています。
 2021年度については、重大な事故・違反はありませんでした。事故につながりうる事象は1件発生しましたが、改修を進め事故の未然防止につなげています。