トップステートメント

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代表取締役社長 伊藤 正明

代表取締役社長
伊藤 正明

当社は2018年5月より、従来のCSRレポートに代えて「クラレレポート」を発行することとしました。当社グループのCSR活動の報告は、「クラレレポート」およびホームページの当サイトにて充実を図ります。是非、ご覧ください。

企業は、事業を通じてどのような付加価値を社会に提供するかが問われる存在です。私たちクラレグループは、その問いに対し、「世のため人のため、他人(ひと)のやれないことをやる」という思いから生まれる行動をもって応えています。「世のため人のため、他人(ひと)のやれないことをやる」は、企業ステートメントに掲げる「私たちの使命」を集約した言葉で、第二代社長の大原總一郎の「企業が得るべき利潤は技術革新による利潤、社会的・国民経済的貢献に対する対価としての利潤に限る」という強い思いを表しています。

私たちは、創立100周年を迎える2026年を見据え、企業としての「ありたい姿」と基本方針を明確化した長期ビジョン『Kuraray Vision 2026』を策定しました。2026年の事業環境を展望すると、大きなルール・法規制の変更や技術革新の出現、情報通信ネットワークやAIの導入によるデジタル化の進展、また、経済情勢においては新興国の存在感がますます高まると予想します。一方で、水資源不足や食糧危機など環境・社会問題が顕在化すると思われます。

そうした中で当社グループにおいては、あらゆる産業で起こり得る劇的な変化などで新たに出現する課題・問題を化学の技術で解決できる機会が増えてくると考えています。一方で、新興国企業・ベンチャー企業などの新規参入によるボーダーレスな競争激化が起こるリスクも高まることが予測されます。当社グループは、将来起こりうる変化を事前に予想し、どのような会社として発展していくかを明確にした上で、その機会とリスクに対して、それぞれの施策を推進していくことが重要だと考えます。

これらを背景に、『Kuraray Vision 2026』では「独自の技術に新たな要素を取り込み、持続的に成長するスペシャリティ化学企業」をありたい姿に掲げ、その実現に向けて、2018年より中期経営計画『PROUD 2020』をスタートしました。「PROUD」には『クラレグループを取り巻くすべての人が誇りに思える(PROUD)企業』を目指すという意味を含み、社員が幸せになるために働くことができる「安心・安全な会社」「働くことに誇りを持てる会社」であるとともに、「独自の技術をベースに持続的に発展していく会社」でありたいという思いを込めています。

中長期的な社会課題に対しクラレが貢献できるものには、例えば水や食糧不足、或いは環境への負荷といった問題の解決に貢献する製品やソリューションの提供があります。環境面においては、環境に優しい生産プロセスにより自らの生産活動において環境負荷を低減することだけでなく、お客様が製品を製造する過程での環境負荷低減にも役に立っていきたいと考えます。

近年、企業の積極的な貢献が求められているSDGs(国連で採択された持続可能な開発目標)への取り組みについても、その一部はすでにクラレが実践している項目もあると考えています。今後は、その取り組みを社外に対してどう発信していくのかを考えつつ、足りない部分を充実させたいと思っています。

これらの社会課題の解決を目指し企業活動を行うのは人であり、人材の活用や活性化は重要な課題になります。社員一人ひとりが「より良く生きる」ための職場づくりとして、働き方改革を通じて仕事の効率性と質的向上を図り、社員のワークライフバランスの充実を目指しています。また、生産現場を含めて女性が活躍できる場はまだまだあると考え、制度づくりや働きやすい環境を整えるなどの女性活躍推進への取り組みも強化しています。このような取り組みが女性管理職の増加に繋がると考えています。

また、近年行ったM&Aにより外国人社員比率は3割を超え、外国人の執行役員は3名となりました。グローバルな人材活用を目指し、人事制度や教育体制を整備していますので、外国人の経営幹部への登用も増えると期待しています。

これらの取り組みを通じて、「誇りに思える(Proud)企業」の実現を目指しますが、働くことに誇りを持つためには、コンプライアンス意識や品質向上意識といった倫理観の醸成が必要です。当社は2017年3月に防衛装備庁が発注する繊維製品の競争入札に関して公正取引委員会より排除措置命令を受け、また2017年2月に浄水施設、ごみ焼却施設で使用される活性炭の製造販売で、公正取引委員会による立ち入り検査を受けました。これら一連の事態を厳粛かつ真摯に受け止め、再発防止とコンプライアンスの徹底を図っています。一方、品質については企業ステートメントで「私たちは、安全に配慮した高品質の商品・サービスを開発提供します」と誓っており、品質管理・品質保証のレベルアップに継続的に取り組んでいます。高い倫理観を持ち良き企業市民として社会から信頼される会社にしたいと考えています。

私はクラレグループを「安心・安全な会社」、「誇りを持てる会社」、「独自の技術に新たな要素を取り込み、持続的に発展していく会社」にしたいと社内で繰り返し言っています。クラレグループが成長し続けるには、このような思いを共有し、人から人へと伝えていくことが重要です。私たちがやるべきことにこだわり、社会に付加価値を提供することで利潤を得るという大原總一郎の思いは現在まで受け継がれています。このような会社のあり方とこだわりを後世に引き継いでいくことを持続的成長に向けたコミットメントとしてステークホルダーの期待に応えていきます。

伊藤 正明