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株式会社クラレ

株式会社クラレ(本社:東京千代田区、社長:伊藤正明)は、従来品より耐熱性を約15℃向上させた高耐熱性メタクリル樹脂<パラペットSP>を開発しました。

1.開発の背景

メタクリル樹脂(PMMA)は、透明性、耐候性に優れるという特徴を有し、自動車、液晶ディスプレイ部材、建築材料、雑貨など幅広い分野で使用されています。当社では原料モノマーであるメタクリル酸メチル(MMA)からPMMAを生産、さらにシートやフィルムまで一貫生産しています。多様な重合技術、成形加工技術などの当社独自技術を活用した差異化ポリマー製品を展開しており、特に光学用高機能グレードや軟質グレードなどで高いシェアを有しています。
近年、PMMAにおいても、透明性、耐候性、成形性に加えて、耐熱性向上の要求があります。当社は、PMMA本来の物性を保持したまま高い耐熱性を有したPMMA<パラペットSP>の開発に成功、このたび本格的にサンプルワークを開始します。

2.本製品の特徴

PMMAの耐熱性を高める手法として、耐熱性の高いモノマーの共重合やポリマー鎖に環状構造を導入することが一般的に行われていますが、この様な手法で得られる耐熱性PMMAは、剛直性が高くなり、脆く割れやすいという課題があります。当社ではこの課題を解決するため、PMMAの高次構造に着目し、これを制御する重合技術を開発し、工業化することに成功しました。
当社が開発した<パラペット SP>は、PMMAが本来有する力学物性、光学特性、耐候性を保持したまま、一般的なPMMAと比較して約15℃高い、約130℃のガラス転移温度を有します。

また、製造方法に由来して、表面硬度の向上効果も確認されています。更には、他の一部樹脂との相溶性についても良好な傾向が確認されており、発色性改善等の樹脂改質剤としての効果も期待されます。

3.用途

  • 高い耐熱性能が要求される、自動車用途や光学用途
  • 他樹脂とのブレンドによる樹脂改質剤
  • 各種フィルム原料、表面コーティング剤  など

ご参考

高耐熱性PMMA<パラペット SP> 分子構造の模式図

ポリマー中のモノマーユニットが交互となるシンジオタクティシティを高めることで、高い耐熱性が発現。

高耐熱性PMMA<パラペット SP> 分子構造の模式図

物性データ

物性 単位 試験方法 <パラペットSP-01> <パラペットSP-13> <パラペットHR-S>
(通常耐熱グレード)
光学特性
全光線透過率【3mmt】 JIS K7361-1 92 92 92
屈折率【nd】   JIS K7142 1.49 1.49 1.49
熱的性質
ガラス転移温度 JIS K7121 131 123 117
荷重撓み温度 JIS K7191 1Af 106 104 102
VST ISO 306 B50 120 115 110
機械的性質
引張破壊応力 MPa JIS K7191 1A/5 81 80 78
曲げ弾性率 MPa JIS K7171 3000 3300 3200
シャルピー衝撃強度【ノッチ有】 KJ/m2 JIS K7111 1eU 1.3 1.3 1.3
鉛筆硬度   JIS K5600 3H 3H 3H

*上記数値は当社測定の代表値です。

以上