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鉄建建設株式会社
株式会社クラレ

内巻き補強したトンネル覆工載荷試験状況

鉄建建設(株)(社長:神田志義)と(株)クラレ(社長:和久井康明)は、(独)土木研究所 と共同で、高強度繊維補強モルタルを用いて既設トンネルを内巻き補強する「高強度薄肉補強工法」を開発しました。本工法は、内巻き補強材として、圧縮強度とじん性に優れた短繊維混入モルタルと、引張補強材として連続繊維メッシュを組み合わせた工法で、経年劣化や地山からの土圧の増加などにより損傷が発生した覆工コンクリートの機能回復および補強を目的に開発したものです。(独)土木研究所において実大規模の供試体による載荷実験を実施して、十分な補強効果が得られることを検証し、設計・施工法を確立しました。
本工法は高強度・高じん性材料を用いて、補強層を薄肉化し、内空断面に余裕がない既設トンネルでの内巻き補強を可能にしました。また、分割施工によってトンネルを供用しながら施工することができるので、コストの縮減や工期の短縮が可能となります。このような特長を活かして、コンクリートの剥落や大きな変状が懸念される道路トンネルの補強を中心に幅広く展開を図っていきます。

(背景)

これまで整備されてきた社会資本が順次、老朽化していく中で、安全の確保等その本来の役割を果たし続けるためには、維持管理・更新を計画的かつ効率的に行っていくことが求められています。このことから、鉄建建設とクラレでは、既設構造物の長寿命化を目的とした維持管理技術に関する共同開発を行っています。その一つとして、両社は(独)土木研究所と共同で、損傷が発生した覆工コンクリートの機能回復および補強を効率的に行う高強度薄肉補強工法の開発を行ってきました。

(概要)

本工法は、内巻き補強材として高強度のモルタルにPVA(ポリビニールアルコール)繊維を混入した高強度繊維補強モルタルと連続繊維を用いた補強工法であり、使用する繊維補強モルタルが高強度(圧縮強度40~60MPa)であるため補強層厚を薄くすることができます。さらに、引張補強材としてPVA繊維の連続繊維を用いていることで、曲げ耐力も期待できます。これにより、補強層厚が薄くても大きな補強効果を発揮することができるため、内空断面に余裕が無い既設トンネルへの適用を可能としました。

既設トンネルへの内巻き補強のイメージ図

短繊維の外観

連続繊維メッシュの外観

本工法の特長は以下のようになります。

(1) 分割施工が可能
本工法は分割施工が可能です。例えば二車線トンネルの場合では、上り線のみを片線規制した状態で下り線を施工し、その後、上り線を施工するといった施工法をとることができるため、供用中のトンネルに対しても最小限の規制で施工することができます。
(2) 補強層厚の薄肉化
使用する繊維補強モルタルが高強度(圧縮強度40~60MPa)であるため補強層厚を薄くできます。(独)土木研究所と行った共同研究の結果では、補強層厚75mmで、既設覆工300mmと同等の耐荷力を示しました。
(3) 工事コストの縮減
本工法に適用する高強度繊維補強モルタルは、生コンクリート工場で製造することができるため、施工現場に簡易プラントのような特別な機械は不要です。さらに、従来の内巻き補強 のようにセントル型枠を必要としないことから、従来の補強工法に比べて大幅にコストを縮減することができます。
(4) 工期の短縮
セントル型枠を必要としないこと、および分割施工を可能にしたことから、従来の内巻き工 法に比べて工期も大幅に短縮することができます。
(5) 優れた施工性
本工法では、必要に応じて短繊維補強モルタルで製造したセメントボードを埋め込み型枠として使用することができます。このボードは、非常に耐衝撃性、変形性能に優れており、トンネルの曲面に応じて加工することが可能です。さらに、サンダーで容易に切断できるので、トンネルの形状に合わせた加工が簡単にできます。
(6) 型枠ボードの変形性能 高い設計自由度
高強度繊維補強モルタルの強度、引張補強材である連続繊維の補強量および補強層厚を要求性能に応じて選択することが可能であり、条件に合わせた最適な補強層を構築できます。

2車線断面トンネルを模擬外径9.7m(無筋覆工t=300mm、内巻き補強t=75mm)
試験概要図

従来の300mm 厚の無筋覆工:従来の覆工を想定して載荷
損傷した従来の無筋覆工(300mm厚)に本工法で内巻き補強(75mm厚)した覆工:
従来の無筋覆工に載荷して損傷させた後に、内巻き補強をして再載荷
実物大載荷試験結果

型枠ボードの変形性能