研究開発/商品・用途開発
バイオ由来の原料から
液状ゴムを創りだす
エラストマー研究開発部
上原 陽介
2008年入社
理工学研究科 有機・高分子物質専攻修了
私の仕事

クラレでは、新たな時代に向けた開発プロジェクトが社内のあちこちで始まっています。私が取り組んでいるのは、バイオ由来の原料から液状ゴムの開発。クラレが長年にわたって培ってきた技術を活用し、石油化学の既成概念を超えた発想で、画期的な新素材の製品化に挑戦しています。

世の中にないものを創りだす喜びと苦しみ

大学では高分子の分野を専攻していたため、その知識を生かした仕事に従事することを希望していました。その中で、クラレは基礎研究から市場開発まで携われる会社だと知り、興味を持ちました。また、会社について説明をしてくれた先輩社員の熱い語り口調が印象に残り、結果的に入社を決めたのです。
現在、スチレン系エラストマーの商品開発を担当しています。この系列の材料はゴム弾性が良く、加硫ゴムの代わりなることから、タイヤをはじめとする工業製品やスポーツ用品、医療器具など幅広い分野で利用されています。入社一年目からこの分野で開発テーマを任され、医療用の新しい素材を生み出すことができました(評価段階でボツになりましたが…)。
商品開発は先進の技術を形にして、さらに量産化するまでが仕事です。世の中にないものを創造する醍醐味と、技術的な課題を解決するための苦しみの両方を味わう仕事だといえます。また、日々の仕事では、失敗を恐れることなく、常に新しいことに挑戦するクラレの社風を実感しています。

「開発は不可能」という先入観を打ち破る

私が担当しているプロジェクトは、ひと言で言えばバイオ系の原料を用いた液状ゴムの開発です。液状ゴムは自動車用タイヤなどの分野で需要が拡大しています。当社では、すでにイソプレンやブタジエンが由来の液状ゴムを商品化していますが、私が手がけるプロジェクトは、それをサトウキビから作ろうというものです。将来、石油資源が乏しくなることを見すえるとともに、環境負荷がより少ないモノづくりをめざすことが開発の背景にあります。
これまでの石油化学の世界では、「植物由来の原料はさまざまな不純物が混じっていて、重合などとんでもない」というのが常識でした。まして、サトウキビから液状ゴムをつくるなど、まだ世界のどこの企業も成功していません。自分自身、初めて話を聞いたときは「こんなこと、不可能だ」という先入観が頭の中を占めました。
これという論文もない中で、まさに暗闇の中を手探りで進むごとく開発を進めたのです。当初は「開発は絶対に無理」と思い込んだものの、候補物質の特性を追究していくと、技術者にとって興味深いことが次々にわかってきました。さらに、苦心の末に試作品をつくりあげて、ユーザーであるタイヤメーカーに提案したところ、関心は予想以上に大きく、開発に手応えを感じています。

量産化に向けた高いハードルをどうクリアしていくか?

バイオ由来の原料から商品を量産化するのは、研究開発に携わる者にとって魅力ある挑戦である一方、実用化に向けては難しい課題がたくさんあります。そもそも製造過程の一つであるアニオン重合は反応の制御が難しいことで知られています。しかも、石油生成物と異なり、バイオ由来の原料は前述のように単一の物質ではないため、ラボ段階で少量の試作品はできても、量産段階へとスケールアップしたとき、反応で何が起きるのか、今のところはっきりしていません。
現在、量産技術の確立に向けた戦いが始まっています。クリアすべき技術のハードルはとてつもなく高いといえますが、面白い物質だけに何としても世の中に出して、社会の役に立ちたいと、研究開発に没頭しているところです。
当社における商品開発の魅力と強みは、ほかにはない技術もさることながら、異分野の研究部門や生産部門での人と人とのつながりです。商品化の過程で行き詰まったときに意見を求めると、想定外の解決のヒントをいただいたり、量産プロセスを検討する際、「こうした方が安全を担保できる」と示唆していただいたり、商品企画を進める上で社内の知恵は欠かせません。
当面の目標はもちろん新商品のポリマーを一人前に仕上げて、量産化までこぎ着けること。道はまだ半ばですが、困難にひるむことなく前向きに進んでいくつもりです。

学生へのメッセージ

「今これをやっておけ!」

大学時代、ESS(英語研究会)に所属して、ディベートの大会ではベスト4の成績を残すことができました。勉強でもスポーツでも何か一つのことに打ち込んで結果を出すと、それが自分の自信になるものです。若いうちに「これなら人に負けない」というものをつくる努力が大切ではないでしょうか。また、会社選びでは最初から先入観で決めつけるのではなくて、さまざまな視点から複数の業種、企業を見ることをお勧めします。