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未来との対話

代表取締役社長伊藤 正明
兵庫県出身。1980年に入社。愛媛県の西条事業所にてポリエステル繊維の生産および開発に従事。大阪本社にて同製品の生産管理を手がけ、2002〜2004年にかけて子会社が中国に設立した工場の立ち上げを担当。その後、岡山事業所にてビニロン繊維の生産、東京本社にてメタアクリル樹脂事業部長、取締役常務執行役員などを歴任した後、2015年から現職。

時代の先を見すえたとき、
クラレは社会の中でどのような存在をめざすのか?

時代が目まぐるしく変わる中でクラレは大きな潮流をしっかり見すえ、
変化に挑戦していくことで「世界に存在感を示す高収益スペシャリティ化学企業」を志向している。
創業以来のDNAを踏まえつつ、これからどこに向かおうとしているのか。
2015年から社長に就任した伊藤正明に話を聞いた。

次代に継承するクラレの原点

クラレのDNAとはどのようなものでしょうか?

当社がどのような企業であるかを理解していただく上で、その原点を知ることが大切だと考えます。創業者である大原孫三郎は、経営者としてレーヨン事業の発展に努める一方、大原奨農会農業研究所や倉敷労働科学研究所など三つの研究所を設立し、これらを通じて社会事業にも尽力しました。また、その子息である大原総一郎は戦後の混乱期の中で、ビニロンの工業化に努めるとともに、企業と社会の関わりについていち早く取り組んできました。

私が当社のDNAとして特に着目しているのは、大原親子の先見性です。大原孫三郎が「わしの眼は十年先が見える」と語ったことに学び、時代という大きな潮流の先にあるものをしっかり見すえて、変化に挑戦していくとともに、自ら変化を起こす存在をめざすことが大切であると考えます。

また、大原総一郎は早くから「投資」と「投機」の違いを見定めて、企業としての使命を考えていたほか、公害問題などに着目して企業の社会的責任、すなわちCSRを追求した経営に取り組みました。21世紀に入ってから、世界の趨勢として企業市民として行動することの重要性が盛んに唱えられていますが、当社では1世紀近い昔からすでに取り組んできた歴史があります。私としては、こうしたDNAをしっかりと受け継ぎつつ、クラレのさらなる発展を考えていきたいのです。

新たな挑戦の始まり

クラレが培ってきた強みとは何でしょうか?

クラレの成長の歴史を振り返ると、研究開発と事業化における「新しいことへの挑戦の歴史」でした。当社第二の祖業であるビニロンの工業化では、その原料であるポバールの生産から一貫して取り組みました。当時、繊維会社が化学原料の製造まで手がけることに対し、批判も多かったのですが、それを乗り越えて事業化しました。それだけに立ち上げの苦労は尋常なものではなかったようです。
その後、イソプレン化学に取り組んだ際も、当初の構想が頓挫し、散々苦労しました。しかし、その過程でさまざまな素材と用途を開発していったことで、たとえば熱可塑性エラストマーといった独自の製品を生み出してきました。
現在、当社では多種多様なナンバーワン、オンリーワンの製品を持っていますが、その根本をたどっていくと、根っこの部分では一つにつながっていることが多いわけです。いわば「地下茎」でつながった事業を増やすことを得意としてきた当社ですが、これからの時代を見すえたとき、果たしてそれだけでよいのかと考えています。世界市場での成長に挑戦していくためには、軸足は既存の技術や製品に置きつつも、もう片方は従来と異なる新領域を開拓していく覚悟が必要なのです。

クラレにおける新たな潮流とはどのようなことでしょうか?

新領域の開拓に加えて、化学メーカーとして素材を製造して供給するだけでよいのか、と思っています。素材をもとにした付加価値のある製品や部材の提案など挑戦すべき課題はたくさんあります。しかも重要なことは、新たな挑戦についてこれまで以上にスピード感をもって行うという点です。

たとえば、当社はプラスティックの中で最高レベルのガスバリア性を有する「エバール」という製品を持っています。これに関連して、2015年4月にバイオマス由来のバリアフィルム事業を展開するオーストラリアの企業を買収しました。今後、世界的に顕在化している食品包装材料のバイオマス化というニーズに合致したバリア材を提供していく考えです。こうしたM&A(企業の合併買収)は、当社の新たな挑戦であり、さらなる成長を促す原動力となることでしょう。

事業家精神を発揮できる企業

これからのクラレに求められる人材像とは?

当社に必要な人材とは、失敗を恐れることなく挑戦する気概を持った方です。それとともに、創業時代のDNAに共感して、これからの社会に貢献できる事業を創出できる方です。当社では、独自の素材を生み出すとともに、そのプラントの立ち上げを自ら手がけ、さらには事業として大きく育てることまで一貫して挑戦することが可能です。実際、そのように活躍している先輩方がいます。若い皆さんも事業家精神を発揮して、未来に向けて飛躍する事業をぜひ立ち上げてほしいのです。

私自身、35年以上にわたるクラレ人生の中で、数多くのチャンスをいただき、時にはとんでもない苦労を重ねつつも、常に誇りを持って仕事に打ち込んできました。大きな成功を成し遂げるには、時に自信を失い、苦い失敗も味わうことでしょう。しかし、幾多の試練を乗り越えた先に、当社でしか体験することのできない成功が待っているはずです。ご自身の幸せのために、そして広く世界の幸福に貢献していくために、皆さんの限りない力を貸していただきたいと願っています。

社長の告白

上方落語など伝統芸能の通です。

社員には秘密ですが、クラレの採用面接の時「君は成績が悪いなあ」と指摘されたほど、学生時代はハンドボールやサッカーに打ち込んでいました。本はSFから歴史小説まで相当数読みましたね。今は上方落語や文楽、狂言など伝統芸能の愛好家で、話し出したら何時間でもいけます(笑)。