kuraray 株式会社クラレ


ニュースリリース 2012年

福井大学とクラレ
高次加工技術により金属イオンを選択的に吸着する不織布を共同開発
~レアメタル回収への応用展開を視野に~

2012年2月8日
国立大学法人福井大学
株式会社クラレ

国立大学法人福井大学(文京キャンパス:福井県福井市、学長:福田 優 以下福井大学)と株式会社クラレ(本社:東京都千代田区、社長:伊藤 文大 以下クラレ)は、このほど共同で、電子線グラフト重合を利用した高次繊維加工技術を施した特殊不織布で金属イオンを選択的に吸着・離脱させることに成功し、共同ワークを開始します。

今後、金属イオン回収事業の策定作業に入り、電子線グラフト重合に対して好適な素材コラボレーションによる産学共同の日本プロジェクトとして早期にスタートさせる予定です。

今回の取組は、2010年から先行実験を行い、2011年7月より福井大学とクラレとの間で共同研究を本格化させ、共同特許出願も終了しております。

なお、本技術は、2月15日から東京ビッグサイトにて開催される[nanotech2012]において、(株)クラレクラフレックス(クラレ100%出資)ブース(小間番号:E-03)に展示する予定です。

開発の背景

  • (1) 技術確立が急務であるレアメタル回収を可能にする繊維の高次加工技術を、福井大学 大学院工学研究科ファイバーアメニティ工学専攻堀研究室(堀照夫教授)で研究していた。
  • (2) 研究の過程でクラレが開発した、蒸気で立体的な繊維構造を構成する不織布<フレクスター>が好適であることがわかり、共同開発に至った。

今回開発した技術の概要と特長

  • (1) 繊維に電子線グラフト重合という高次加工技術を施すことにより、レアメタルなどの金属イオンを溶液中から選択的に、吸着・回収することが可能になった。
  • (2) 電子線グラフト重合に反応しやすい、EVOH樹脂(エチレン・ビニルアルコール共重合体)<エバール>を基幹素材とする不織布<フレクスター>を使用することにより、溶液との接触面積が大きく、高速処理が可能になった。

<フレクスター>、<エバール>は(株)クラレの登録商標です。

参考資料

金属イオンを回収する本システムの概要

繊維に電子線を照射し活性化させた後、グラフト重合と呼ばれる特殊加工で吸着基(官能基)を形成し、金属イオンが吸着しやすい構造を設ける。
次に、海水もしくは工場廃液に浸漬させ効率的に金属イオンを捕集し、その後Ph調整などを実施し金属イオンを離脱させる。
多種類の吸着基(官能基)をグラフト処理することで、回収したい金属イオンを選択的に捕集・離脱することにも成功している。

電子線グラフト重合とは
高分子化合物(繊維やフィルム)に電子線を照射しラジカルを生成し、その部分に目的の官能基を有するモノマー(反応性に富んだ小さい化合物)が次々と反応し、元の高分子に接ぎ木するように別の高分子が成長する反応をいう。

不織布<フレクスター>が採用された背景

  • 鞘部が<エバール>、芯部がポリエステルで構成された芯鞘構造繊維<ソフィスタ>(クラレの登録商標)を原材料とした。
  • 均一な空隙を無数に有する緻密な構造で、繊維の太さや繊維密度を自由に変えることができる。
  • その繊維構造からイオン溶液との接触面積が極大化されることや、<エバール>の親水性によって不織布内部への溶液の液流れがスムーズであることなど、<ソフィスタ>の特長を最大限に引き出すことができる。
  • 電子線グラフト重合に反応しやすい素材としては、親水基を持つ<エバール>が優れているという研究成果があり、それを原料とする繊維<ソフィスタ>が、今回の金属回収システムに最も高い効果を示すことが判明した。
<フレクスター>とは
スチームジェット製法で生まれた世界初の不織布で、クラレの独自素材である<ソフィスタ>などの素材と製造条件の組み合わせにより多種多様な不織布をつくることができる。
<ソフィスタ>を高温・高圧で処理した不織布は、厚みのあるボード状に加工することも可能で、通気性、吸音性、衝撃吸収性、断熱性など多様な機能を有する。
クラレが開発を、クラレクラフレックスが製造・販売を担当している。
EVOH樹脂<エバール>とは
1972年に当社が世界で初めて工業化に成功した独自のポリマーで、エチレン・ビニルアルコール共重合体。その構造は炭化水素(CH2)がつながった鎖に、水酸基(OH)がたくさんぶら下がったもの。「気体を通しにくい」特長を持ち、食品包装材料や樹脂製ガソリンタンクのバリア材などに使用されている。

国立大学法人福井大学の概要

文京キャンパス 福井県福井市文京3-9-1
学長 福田 優
設立 2004年4月1日
沿革 1949年5月発足
2003年10月旧福井大学と旧福井医科大学が統合
2004年4月国立大学法人化

株式会社クラレの概要

本社 東京都千代田区大手町1-1-3
代表者 代表取締役社長 伊藤 文大
資本金 890億円
設立 1926年6月24日
事業内容 樹脂、化学品、繊維製品の製造・販売

クラレクラフレックス株式会社の概要

本社 大阪市北区角田町8-1
代表者 代表取締役社長 中島 多加志
資本金 1億円(クラレ100%)
設立 2005年4月1日(前身は1971年設立のクラレチコピー(株))
事業内容 不織布および不織布製品の製造・加工・販売

以上