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株式会社クラレ

新規導電性繊維 <クラロンEC>
導電性繊維 <クラロンEC>の断面図

株式会社クラレ(本社:東京)は、このたび、独自の金属ナノ微粒子複合技術を用いた新しいタイプの導電性繊維<クラロンEC>の開発に成功しました。今回開発した<クラロンEC>は、ポリビニルアルコール分子の水酸基が種々の金属イオンと相互作用することに着目し、繊維内部に硫化銅のナノ微粒子を微細に形成させた高導電性ポリビニルアルコール繊維です。
現在、導電性繊維はミクロンサイズのカーボンブラック粒子を練り込んだものが汎用されていますが、この<クラロンEC>はナノサイズの金属微粒子を複合することで、比表面積の増大と粒子間距離の減少効果によって高い導電性を発現することに成功しました。また、繊維表面に無電解メッキを施した、いわゆる“金属メッキ繊維”も導電性繊維として使用されていますが、屈曲・磨耗・塩水腐蝕等によりメッキ層が破壊され、導電性が低下するといった問題がありました。<クラロンEC>は導通経路を繊維内部に有しており耐久性に優れることから、これらの問題を解決できる素材として期待されます。
さらに、前記したカーボンブラック練り込みタイプの導電性繊維や金属メッキ繊維では対応できなかった導電性の領域が、<クラロンEC>では製造条件の工夫によって達成できることが見出されています。

性能を3つに大別すると、(1)導電粒子のナノサイズ効果で、高い導電性を発現すること、(2)導通経路が繊維内部にあるため屈曲・磨耗などによる外部損傷を受け難く、耐久性に優れること、(3)形態自由度が高く、導電性の制御が可能であることとなります。

<クラロンEC>の特長を生かした具体的な応用例としては、(1)静電・帯電防止材(除電ブラシ、静電気除去テープなど)(2)電磁波シールド材(電線被覆材など)(3)電磁波吸収材(パーティション、建材・壁材・内装材など)(4)センサー・スイッチ材(センサー付き尿取りパッド・布製スイッチなど)(5)面状発熱体(カーシートヒーター)などが挙げられます。
特に、将来のユビキタス社会の到来による情報・データ通信ツールの多様化に伴い電磁波対策の必要性がクローズアップされている中、自動車・電車などの車内あるいはオフィスなどの閉鎖空間での電界エネルギー低減を狙った軽量かつ加工自由度の高い繊維状電磁波吸収材を提案するなどの展開を図っていきます。