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株式会社クラレ

「セプトン」イメージ

当社は<セプトン>の商標で展開している水素添加スチレン系熱可塑性エラストマー(以下 水添スチレン系エラストマー)の高機能化の一環として、従来品より耐熱性、耐油性を向上させたコンパウンドを生産できる<セプトン>Vシリーズを開発しました。

水添スチレン系エラストマーはハードブロック(スチレン)とソフトブロック(エチレン・プロピレン・ブチレンなど)で構成され、各種プラスチックと同様に加熱して容易に成形できるとともに、ゴムのような弾力性に富む特長があります。このため加硫ゴムや軟質塩化ビニルに替わる軟質素材として、現在約10万トン世界市場があり年率約10%で拡大しています(当社推定)。この樹脂を成形する場合はポリプロピレンやプロセスオイルと単純にブレンドするか、この樹脂を架橋しながらブレンドしてコンパウンド(成形前材料)にし、それを用いることが一般的です。しかし、この樹脂を用いて、架橋しながらコンパウンドしたものはソフトブロックのみ架橋するため、耐熱性や耐油性に限界があり、これらの機能を重視する市場では現在も加硫ゴムが使われています。

<セプトン>Vシリーズはこれまでの<セプトン>に対し、ハードブロックの組成を変えて反応性を持たせるとともに、当社が開発した特殊なコンパウンド技術を用いることにより、コンパウンド生産時にソフトブロックに加え、ハードブロックも架橋することが可能となります。これによりコンパウンドの耐熱性や耐油性が向上し、加硫ゴムを使用する市場の中で従来品では展開が難しかった自動車の各種シーリング材や建築材料などの分野への参入が可能になります。

<セプトン>Vシリーズは04年夏に生産を開始する予定です。この製品は当社が開発したコンパウンド技術をセットにして展開していきますが、コンパウンドメーカー各社が持つ、独自のさまざまなコンパウンド技術を組み合わせることで、開発の加速化、さらなる用途の拡大が期待できることから、これから各メーカーと親密な連携を図り、数年後には5,000トンの規模に育てていきたいと考えています。そしてこの新製品を核に当社のエラストマー事業の拡大につなげていきます。

概要

1. <セプトン>Vシリーズとは

  • ハードブロックに反応性を持たせた新しい水添スチレン系エラストマー。
  • コンパウンドにすることにより、柔軟性・低温特性は従来品と同等で耐熱性・耐油性が向上する。

2. 特長

<セプトン>Vシリーズを用いたコンパウンドは

  • 高温での圧縮永久歪が低いものができる。
    (120℃、22時間後の圧縮永久歪が20%台 従来品は50% 数値が低い方が復元性よい)
  • 長期耐久性に優れます。
    (1,000時間後でも 圧縮永久歪が30%台を維持)
  • 耐油性が向上する。
    (JIS3号油 100℃ 70時間、重量変化が約90% 従来品 約140%)

3. 用途

  • 自動車のウェザーストリップ
  • 自動車用内装表皮材
  • ラック&ピニオンブーツ(ラック&ピニオンのカバー)
  • エアダクトカバー、ホース
  • 電線被覆材
  • 窓枠シール
  • 建築用ガスケット
  • 遮水シート、止水材
  • 保護シート

など

4. 今後の計画

  • 今後ユーザーワークの拡大を図り、04年夏生産開始予定。
  • 数年後に販売量5,000トンを目指す。

(参考)

水添スチレン系エラストマーについて

  • (1) 熱可塑性エラストマー(熱により軟らかくなり、ゴムのような弾性を持つプラスチックの総称)には、他にもオレフィン系・ポリエステル系・ウレタン系などがあり、またスチレン系の中でも水素添加したものと、水素添加を行わないもの(未水添)がある。それぞれに特長があり、使い分けられている。
  • (2) 他の熱可塑性エラストマーに対する水添スチレン系エラストマーの特長は、
    • ゴム弾性に優れる
    • 柔軟性に優れる
    • 耐寒性に優れる
    • 耐薬品性に優れる
    • 軽量化が図れる
    などが挙げられる。
  • (3) 水添スチレン系エラストマーの主な用途は、
    • 加硫ゴム代替や軟質塩化ビニル代替などの軟質素材
      (通常、他素材と複合されたコンパウンドにして使用される)
    • 粘接着剤
      (有機溶剤を用いない接着剤として使用される)
    • 樹脂改質剤
      (例えば、弾性を生かし、ポリプロピレンなどの耐衝撃性向上に使われる)
    <セプトン>Vシリーズは主にこの中の軟質素材向けに使用される。

加硫ゴム市場について

加硫ゴムには天然ゴムや、ジエン系・NBR(アクリロニトリル・ブタジエン・ラバー)系・EPDM(エチレン・プロピレン・ジエン・ターポリマー)系などの合成ゴムがあり、その世界市場は全体で年間1,500万トン(出典:IISRP)。
従来品では展開が難しかった加硫ゴムの市場の中で、耐熱性・耐油性の向上と易成形性(熱に融かして成形できる)により新規に参入できるのは自動車部品・機械部品・建築材料などの分野で、その市場は年間約50万トンと推定している。

当社・コンパウンドメーカー・成形加工メーカーとの関係について

<セプトン>を成形加工に用いる場合、一般的には下記のような関係になる。

「セプトン成形加工」イメージチャート