製品のはてな?

<ベクトラン>

<ベクトラン>ってどんな繊維なの?

クラレが生み出した高強力繊維<ベクトラン>

Q <ベクトラン>って、ワイヤーの代わりなどに使われているそうですね。
A

はい。<ベクトラン>はスーパー繊維と言われるくらい強く、引っ張ってもなかなか切れない「高強力」繊維なんです。例えば、直径0.4ミリの<ベクトラン>のコードで、体重60kgの人を持ち上げることができるんですよ。この特長を生かし、金属ワイヤーの代替としてロープなどの各種産業資材分野に使われています。

Q なるほど。どうして高強力という特徴を付与できたんですか?
A

簡単に<ベクトラン>の製造方法について説明しましょう。<ベクトラン>は、結晶化度が高い、つまり、分子と分子の結びつきが非常に強いポリマーを繊維化したポリエステル系(ポリアリレート)繊維なんです。より高強力、高性能にすべく、独自の技術で分子の方向性をそろえて紡糸し、均一に高熱をかけるなどの工程を踏んで強度を上げ、<ベクトラン>が作られました。

水産用途から宇宙探査まで幅広く展開

Q 高強力以外の特徴については?
A
ベクトランを使った魚網・ロープ・手袋

優れた特徴はいろいろあって、特徴に応じて用途展開しています。第1に、「水分を吸いにくい」というポリエステル系ならではの特性から、水中での強度劣化がほとんどないという他のスーパー繊維と違う利点を生かして、水産用途、例えば魚網・はえなわ(マグロを捕るロープ)などに展開しています。<ベクトラン>ならば、水産資材として効率的であり、当然ですが金属と違ってさびないので扱いやすいんです。
第2の特徴は「切れにくい」ことです。入り組んだ岩場は格好の漁場ですが、従来の素材だと魚網は切れやすいんですね。対して、<ベクトラン>製の網なら岩場で利用しても丈夫で長持ちするんです。北海道沿岸では、野生のトドが定置網に入った魚を狙って網を破る被害が出ていますが、<ベクトラン>製の網ならトドを殺傷せずに追い払えることから、野生水生生物共存対策事業として魚網関係者からお墨付きなんですよ。

Q 他の特徴も教えてください。
A

はい。<ベクトラン>の「耐熱性」や「電機絶縁性」を生かして、ホットカーペット内で電機を伝える導線の補強として、導線の周辺に入れています。また、「耐摩耗性」「耐切創性」があり、食肉をカットしたり、とがった金属を使う職場で、危険から身を守る安全具として業務用エプロンや手袋に使われています。<ベクトラン>なら、誤って刃物が触れた場合でも大怪我する危険性を小さくできます。その他、「衝撃を吸収する性質」を持ちあわせていることから、テニスラケットのフレームやゴルフクラブの内部に補強材として用いられた実績があります。

Q 以前、火星探査機にも使われたと聞きましたが。
A

ええ。1997年の火星探査で精密機器を火星に着陸させる際に、衝撃を和らげるクッション材(エアバッグの外側)に使われたことがあります。

Q 今後の展望は?
A

今後も特徴を生かして用途を拡充してきます。高強力であることから製品サイクルは長いんですが、丈夫で長持ちする製品を提供してお客様に喜んでいただき、ひいては省資源となり環境保護にも役立てれば、と思っています。現在、取り組んでいるテーマとして、海底ケーブルの補修作業用ロープや通信用飛行船、光ケーブルの補強材用途などがあげられます。