kuraray 株式会社クラレ


トップステートメント

株式会社クラレ 代表取締役社長 伊藤正明

独自技術を基盤に持続的に発展し、社会に貢献していく企業でありたい

CSRに対する要求の高まり

今日、企業の社会的責任に対する要求は非常に高まっています。例えばESG(環境(Environment)、社会(Society)、ガバナンス(Governance))への取り組みが、企業経営の重要なテーマだと言われています。これは、企業がこの3つの観点においてそれぞれの課題にしっかりと対応していくことが、企業の健全な発展や成長の原動力となり、ひいては持続可能な社会の形成に寄与するという考え方です。

最近のトピックスとして、まず環境においては、2015年12月のCOP21で採択され2016年11月に発効したパリ協定が挙げられます。パリ協定では、「世界の平均気温上昇を2℃未満に抑える」に向けて、世界全体で今世紀後半には、温室効果ガス排出量を実質的にゼロにする目標を打ち出しました。

この歴史的な国際合意は、気候変動による悪影響が地球規模で広がっていることに対する各国の強い危機感の表れであり、われわれも持続可能な社会の実現のため、グループをあげてこの目標に取り組むべきと考えます。

次に、社会について、多様性の受容という課題があります。多様性とは人種、言語、性や宗教など、かなり広範囲に及びますが、クラレではまず働き方の改善を通して女性が活躍しやすい職場の形成を目指します。この取り組みが、ひいては多様な働き手がその力を発揮する、活力のある企業への成長を支えるものと考えています。

最後に、ガバナンスに関して、企業価値の向上を目指すうえで、コーポレートガバナンスがますます重要な課題とされ、当社は東京証券取引所が導入したコーポレートガバナンス・コードに対応した効率的なコーポレートガバナンス体制の構築により、多様なステークホルダーとの適切な関係を維持し、社会に対する責任を果たすことで、長期的、持続的な企業価値向上を実現したいと考えています。

当社グループの目指すべき道

当社のCSRに対する基本的な考え方は、創業者、大原孫三郎の「社会から得た財をすべて社会へ還元する」という信念や、二代目社長、大原總一郎の「企業が得るべき利潤は『技術革新による利潤、社会的、国民経済的貢献に対する対価としての利潤』に限る」という思想を受け継ぎ、「世のため人のため、他人(ひと)のやれないことをやる」という使命に表れています。CSRという言葉が生まれるはるか以前に、企業の社会的な責任に対する明確な考えを有した創業者を持つ当社には、その使命感が脈々と流れています。

私は常々社員に対して「独自の技術をベースにして持続的に発展していく会社にしたい」という思いを伝えています。強いコア事業はさらに強く、大きくするとともに、成長を期待する事業は独創性の高い新しい技術による規模拡大、新事業・新商品による一層の収益拡大を図ることで、会社・社員ともに成長を続けると同時に、事業を通して社会に貢献していく、そんな会社でありたいと考えています。

具体的な取り組み

このような考え方を持つ当社の具体的な取り組みのひとつが、世界の化学産業界が推進する「レスポンシブル・ケア(RC)」への参画です。当社は「RC世界憲章」に私の署名をもって賛意を表し、RC活動をCSRのコア活動として推進しています。

その中には「環境保全」「保安防災」「労働安全衛生」「物流安全」「化学品・製品安全」「社会との対話」の活動項目がありますが、国内各事業所においては各項目についてPDCAを廻し、継続的な自主改善が図られています。今後は、本社や海外関係会社を含めたグループトータルの活動として、レベルアップが課題と認識しています。

パリ協定の目標となる温室効果ガスの削減に関しては、法整備も含め、政府から産業界へ具体的な数値目標が提示された段階で、RC活動の一環に含め取り組みを進めていきます。

次に、働き方改善に関しては、単に時間外労働時間の短縮を目指すのではなく、すべての人に等しく与えられた大切な資産である時間の価値を認識する取り組みを、2015年から始めています。

全員が限られた時間の中で仕事をし、家族・家庭を育み、地域との関係を築き、自分の成長を目指していくことが肝要であると考えています。

人生を「よりよく生きる」ために会社における働き方は大切です。各職場の一人ひとりが限られた時間を大切に使い、価値の創造と自己の成長を目指しながら「働き甲斐」を実感していくために、各々が質の高い仕事をし、職場全体で効率を上げ、心身の健康を保つといった働き方改善を進めています。

こういった働き方改善が実現すれば、特に日本国内で課題となっている女性社員の活躍の幅が広げられると期待しています。同時に女性社員の採用と職域の拡大、職場への定着の3点を特に重点的な課題と捉え、具体的な施策の導入を進めています。

最後に、コーポレートガバナンスにおいては、クラレは2003年度に経営諮問会議の設置と社外監査役の増員を行い、監査役会を強化しました。また日本企業としては比較的早く、2008年度には2名の社外取締役を選任し、さらなるコーポレートガバナンスの充実を図っています。またコーポレートガバナンス・コードへの対応を表明するガバナンス報告書は、外国人株主へも配慮し英語版での開示も行っています。

再発防止の徹底

当社は、2016年3月、防衛装備庁の発注する特定ビニロン製品の入札に関して、公正取引委員会の立ち入り検査を受け、同委員会の調査に全面的に協力してきましたが、2017年3月に当該入札に関し独占禁止法に違反する行為があったとして同委員会より排除措置命令を受けました。

立ち入り検査直後に、私は全グループ社員に向けて「法令違反をして得るような利益はいらない。法令違反をしなければ利益をあげられないような事業はやめるべき。」というメッセージを発信しました。

加えて、独占禁止法への遵守意識を高めるため「クラレグループ独占禁止法遵守指針」の新版発行・配布を行ったほか、社内体制整備含む様々なコンプライアンス推進の施策を行ってまいりました。

しかしながら2017年2月に浄水施設、ごみ焼却施設等で使用される活性炭に関する独占禁止法違反の疑いで再び公正取引委員会の立ち入り検査を受けました。自ら本件を見つけ出すことができなかったことについて、深く反省しています。このことに関し、お客さま、お取引先を含めステークホルダーの皆さまに多大なご心配をおかけしていますことを心よりお詫び申し上げます。

当社は、これら一連の事態を厳粛かつ真摯に受け止め、このような事態を二度と起こさないよう再発防止策を徹底してまいります。

そしてコンプライアンス強化とともに、社会と調和のとれた企業活動によりいっそう専心し、ステークホルダーの皆様の信頼を回復し、その期待にこたえていきたいと考えています。

伊藤 正明

  • コンプライアンス推進の具体的な施策はP.31に記載しています。