
クラレの歴史は、1926年のレーヨンの事業化以来、ビニロン、〈クラリーノ〉、ポバール、〈エバール〉、イソプレン、〈ジ ェネスタ〉をはじめとして、世界に先駆けて新事業に挑戦す る苦難に満ちた歴史でした。第二次世界大戦を挟む83年 の激動の時代に、独自技術で社会的価値の高い事業を創出する挑戦を通して培ったクラレの企業文化には、企業市民として「世のため、人のため、他人のやれないことをやる」という社会的責任の理念が刻み込まれています。
この報告書が、クラレの企業文化と社会的責任へのコミットメントをご理解いただく一助となれば幸いです。
2008年は、前半のエネルギー資源への投機バブル、後半のリーマン・ブラザーズの破綻をきっかけとする金融危機の爆発と世界同時不況が社会を震撼させました。
クラレは、社会の持続可能性が世界恐慌のリスクにさらされ、需要や雇用が失われて企業の存続さえ不確実になる時代にこそ、企業の社会的責任の原点を意識した経営が重要と考えます。
2008年度は、クラレの中期経営計画GS-21の最終年度でしたが、下期以降の需要急減による収益悪化から大幅な計画未達となりました。この厳しい経営環境に対応するため、2009年度から3ヵ年で収益構造を回復し、新事業を創出・拡大し、世界戦略を加速する中期アクションプランGS-Twinsへの取り組みを開始いたしました。特に、低炭素社会へのパラダイム転換を飛躍の機会ととらえ、グループとして環境指向型の新事業に経営資源を重点投入することを基本方針としています。
クラレは、持続可能な社会に貢献する経営姿勢を堅持して、有効なコーポレート・ガバナンスの下で社会的責任を果たし、企業ミッション「私たちクラレグループは、独創性の高い技術で産業の新領域を開拓し、自然環境と生活環境の向上に寄与します」の達成をめざしてまいります。
2008年には、洞爺湖サミットでポスト京都議定書に向けた新たな国際的枠組みが交渉され、温室効果ガスの長期削減目標(2050年、50%削減)が合意されました。地球温暖化問題の解決は、今後の国際的枠組み交渉のいかんにかかっていますが、企業としてはこれを負担として受け入れるのではなく、むしろ社会に貢献する技術や事業の開発機会ととらえて取り組む必要があると思います。
クラレは、2000年に環境中期計画を策定し、主に自家発電でユーティリティーを賄っている国内事業所を中心に、温室効果ガスを2010年度に1990年度比10%削減する意欲的な目標に取り組んでいます。2008年度までに省エネ・燃料転換対策を通して22.7%の温室効果ガスを削減し、製品の生産量、構成変化による増減の影響を上回る12.7%の排出量削減を達成しました。
今後は生産プロセスそのものの見直しや製品のライフサイクルを通じた排出量削減の観点から、革新的な環境技術や環境対応製品の開発に挑戦いたします。
21世紀はグローバル化した経済、社会、環境の深刻な問題に対して、国家や国際社会が合理的な解決を与えられるかが問われる時代です。社会の一員である企業にも、株主、顧客、社員、地域社会等のステークホルダーに対する直接的な責任にとどまらず、グローバルな社会の持続可能性に対する企業ならではの貢献が求められていると考えます。
クラレは、社員の一人ひとりが「よき市民」として社会に対する責任を強く意識し、高い倫理観に裏打ちされた行動をとる企業文化を誇りとしています。私たちは、これからも同心協力してグローバル企業市民としての社会的責任を果たし、自らの企業理念を実現する努力を惜しみません。
